米作りや酒造りの苦労話をしながら、最後にお客さんと一緒に幸せになれるものづくり|玉旭酒造 玉生貴嗣さん

KURAND
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2017/05/14

まだ飲んだことのない日本酒を飲むとき、どんな人がどんな思いで醸した日本酒か知って飲むと、日本酒はもっと美味しくなると思いませんか?そんな思いで始まった蔵元さんインタビュー、今回は玉旭酒造・玉生 貴嗣(たもう たかつぐ)さんインタビューの後編です。

前回のインタビューでは、一人のお客さんをがっかりさせてしまった経験などをきっかけに、一念発起して「オール富山」の酒造りを確立するお話をお聞きしました。

前編はコチラ

今回は、一つひとつの商品に対する想い、KURANDと一緒にやっていきたいこと、そして読者のみなさんにどのようにお酒を楽しんでいただきたいかなど、濃いお話をたくさん伺いました!


 

日本酒業界はもっと挑戦できるはず。玉旭は初心者にもやさしく、色でわかる工夫を

——日本酒業界に対して何か思いはありますか?

前回お話したとおり、日本酒は可能性を秘めたアイテムだと思います。なのに、なんか殻に閉じこもっているなという思いがありますね。

——例えばどんなところでしょう?

もっと色んなことができるはずなのに、やっちゃいけない雰囲気もある。生酒を燗にしたらだめとか、甘いか辛いかとか。

——そうですね、伝統といえばそうかもしれませんが。

ラベルを斬新にするとか、銘柄や名前を変えるとか、もっともっと挑戦できることがあるはずなんですよ。

——なるほど。玉旭さんのラベルはおしゃれなのが多いですが、ラベルのデザインも玉生さんがされているのですか?

はい、もちろん私がやっています。

——「玉旭」のカラーシリーズにはどんな意味があるのですか?

WHITE、BLUE、BLACKですね。これらは全部生酒プレミアムとしてお出ししてるんですが、新酒に限らずお酒の銘柄って「純米吟醸 無濾過生原酒 おりがらみ」とか、呪文のような長いフレーズじゃないですか。お酒を全く知らない人がそんなに長い銘柄を見て、たとえそれが抜群に美味しくても、次注文するときにそれと全く同じ銘柄を覚えているわけがないんですよ。

——確かに。知識がないとわからなくて、そもそも頭に入ってこないですよね。

そう。「玉旭のあれ、なんだったけな」と、せっかく玉旭まで覚えてくださっているのに、そこでわからないと、玉旭から離れちゃう。それだったら赤色は止まれ、青は進め、みたいな信号機じゃないけど、色で認識してくださったら次またオーダーしやすいんじゃないかなと。「玉旭の黒いのちょうだいよ」って。

——なるほど、やさしいですね!

やさしいでしょ?(笑)味の旨みとか酸味を大事にした純米酒がブラックだな、香りがいい大吟醸はブルーだな、濁っているからホワイトだな、って。

——めちゃくちゃわかりやすいです。

5年前に名前をそういう風に変えてから、製造数量が30倍くらい増えました。一番最初は本当に一升瓶20、30本くらいだったので。

——やっぱり需要があるのですね!
 
 

一つひとつの銘柄やラベルに込められた想い。小さな偶然から生まれたものも

——「DESPERADO」のラベルがすごく目を引きますが、なぜあのラベルになったのですか?

あれは無濾過生原酒で、それにお化粧して飲みやすくしたら「玉旭ブラック」になるんです。でもお化粧する前だから、ならずもの。「DESPERADO」を和訳したら「ならずもの」なんですよ。無濾過だし、加水調整していないし、すっぴんなんです。そこは無濾過だぞとか、原酒だぞとか着飾らないで、ならずものはならずものだ、っていうのをそのまま銘柄にしようと思って。

——へえ、そんな意味があったのですね!

The Eagles(アーティスト)の名曲に「Desperado」っていう曲があって、その歌詞の中に、「トランプをすると、お前はいつもハートのクイーンを引いちゃうよね」っていうフレーズがあるんです。色んなカードがある中で、お前はいっつもハートのクイーンを選ぶよな、ばかだなぁって。そこで、こんなにたくさん銘柄がある中で、ついついハートのクイーンを、ついつい玉旭の「Desperado」を選んでくださいますよねっていう願いを込めてハートのクイーンをラベルにしているんです。

——深い…!それを知ると、また一段と飲むのが楽しくなりますね!蔵元を囲む会でいただいた「ECHOES」※もラベルが素敵で、とっても美味しかったです。

※KURAND CLUBの会員様限定イベントで特別にご紹介いただいた、3月17日発売開始のお酒です。

ありがとうございます。毎日酒造りのとき、もろみを搾ってアルコール度数や酸度、日本酒度を測るんですよ。それでどろどろのもろみを、ろ紙でぽたんぽたんと落として液体にして測るんです。

——毎日測っているんですか。

はい。その液体に浮標を浮かべてその比重で甘いか辛いか、今このもろみはアルコール何度かって毎日タンクの健康状態を検査します。その検査し終わった液体を舐めることもあって、そのときに「これは甘酸っぱくてなんて美味しいんだ」と思って、ECHOESは生まれたんです。

——たまたまですか!

そう、まだ発展途上の酒母の状態で、このまま製品化したらどうなるんだろうって。美味かったし、甘さ、酸味、旨みの三拍子を共鳴させたいので「共鳴=エコー」。前回お話したチューリップの酵母を使ってるから、花びらのようなデザインになっています。

——開発された酵母ですね!もし味見をしていなかったら…?

生まれていないですね。

——ですよね。小さな偶然にも可能性を感じますね!
 

最後の最後にお客さんと一緒に幸せになれるものづくり。小さな蔵ならではの付き合い方も

——今の酒造りで楽しいことと大変なことはありますか?

楽しいところは、自分で田植えして稲刈りして、酒を造って、お客さんにお注ぎしながらその苦労話をお話して、一緒に幸せになれること。ゼロからつくって、最後の最後にお客さんと酒を一緒に飲みながら、幸せになれるものづくりだと思うんです。あんまりないじゃないですか、そういう職業って。

——そうですね。メーカーだったらつくるだけ、ってなりがちですよね。

そうそう。メーカーはつくるだけだし、経営者だったら会社を運営するだけ。

——直接の声はなかなか聞けませんよね。

酒造りをしているからできる分野かなと思っていますね。お注ぎしながら、このお酒は暖冬だったからこうとかどうとか、すごく寒くてなかなか思い描いている品質にならなくて、なんて話もしつつね。一緒に幸せになれる職業かなと。

——苦労話を共有して幸せになれるって素敵ですね。大変なところはありますか?

大変なところは、本当に小さな酒蔵だから、私と杜氏とでお酒を造って、うちの家内が発注を受けて、ラベルを貼って、それを私が運転してお客さんのところに配達して、って全部やるんですよ。

——え、本当に全部ですね!

そうなんです。その3人でほぼほぼ会社をまかなっているもんだから、ちょっとした喧嘩があると、全部崩れるんです。例えば前日に夫婦喧嘩をしたら自分の仕事が雑になったりね。もっと丁寧に温度を測らなければ行けないところを雑な測り方をしたり。嫁だったらラベルが斜めになっていたりして、お客さんによく叱られるっていう(笑)

——なんか曲がってるんだけどって(笑)

そう。それを知ってる仲のいいお客さんからはメールで写真が送られてきたりして、昨日よっぽど大きな夫婦喧嘩をしたのね、っていう楽しいやりとりをさせてもらっています(笑)

——なんだか人間味があっていいなって思っちゃいます。少人数ならではの温かいエピソードというか。

そうですね。だからこそ、杜氏と二人で酒飲みながら「DESPERADO」の話をしてネーミングを決めたりとか、今まで無濾過生原酒とか出したことなかったのになかなか美味しいから製品化しちゃおうぜとか、思い切ったことができるんですけどね。やめるときは、美味しくないし面白くないからやめましょうってすぐに決められるし。

——小さいからこそ、トライアンドエラーがたくさんできるのですね!

そう思いますね。
 
 

ひとつの答えで可能性を排除せず、そのときそのときの自分に合った飲み方で楽しんでいただきたい

——KURANDと出会ったきっかけはなんでしょうか?

東京で行われた富山県の地酒イベントの玉旭ブースに、たまたま商品開発部の青砥さんが来てくださって、お声をかけていただいたんです。14蔵くらい来ていた富山の酒蔵の中でもうちだけでした。そういうところにも恩返しをして、期待に応えていきたいと思っています。100求められたら120、130で応えられるようなお酒造りをしていきたいですし、イベントなどにお声掛けいただいたら最大限行きたいなと思っています。

——遠いのにいつも本当にありがとうございます。KURANDにこれから望むことなどはありますか?

やっぱり最前線じゃないですかね。僕らはお酒を造る方の最前線だけど、KURANDさんはお客さんとの最前線。その最前線同士でお互いに求めているものが今ようやく合致して、いい場所を提供していただいてるなって思います。普通の居酒屋さんだったらメニューに書いてあって、何番のお酒って注文されてお注ぎして、お客さんは「ああ、美味しかった」「次は何番」…でお金払うだけじゃないですか。

——そうですね。「美味しかった」で終わりというか。

こんなにお客さんが自分で選んだり、酒蔵の現場の思いを直接しっかりお客さんに伝えてくれて、尚かつアンケートまで取って最前線の酒蔵に報告してくれて、より最前線・最前線でスキルアップをしているような気がするんですよ。

——なるほど、嬉しいです。

こっちはラベルがどうとか苦労話なんかを直接言えて、KURANDさんはお客様一人ひとりの声をしっかり聞いて我々酒蔵の思いをしっかりと伝えてくださっているなって思っているので、これからもお伝えしあって成長できればなと思っています。

——ありがとうございます。初心者の方でも、造り手さんの熱いエピソードや思いを知ると、一気に親近感が湧きますからね。

そうですね。イベントなど、直接お客さんの感想をお聞きしたりできる場所を提供してくださっているところが本当に嬉しいですよね。なかなか現場というか、お客さん一人ひとりの素の感想を聞けることってめったにないですから。

——こちらも嬉しい限りです!おすすめしたい美味しい飲み方はありますか?

それはよく聞かれます。「このお酒は何度で飲めばいいんですか?」「何に合わせればいいですか?」ってよく聞かれるんですが、「お好みでどうぞ」って言いながら、心の中では「自分で考えろ」って(笑)

——なるほど(笑)

そう、教科書通り、私が言ったとおりにしたからといって、その方が何に合わせて召し上がるかわからないし、その方の体調もわからない。気温も、どこで飲むかも。それがわからない状態で私にはおこがましいし、ご自身なりの楽しみ方を見つけていただきたいなと思っていますね。正解なんてないんですよ。

——そうですね。蔵元さんに言われたら「それだ」と思って他の飲み方を探さなくなっちゃいますもんね。

そう。それじゃ幸せじゃないんです。楽しくない。色んな可能性があるのに、それを排除しちゃっているんですよ。

——なるほど。それこそ生酒だけど燗してみようとか、こんな食べ物に合わせてみようとか、何でもできますよね。

はい、その方が楽しいじゃないですか。体験を大事にしていただきたいですね。

——そうですね!最後に読者のみなさんに一言お願いします。

もっと日本酒を、玉旭を飲んで知ってください!

——駐車場も作りますしね!

そうですね、「このお酒を造っている地域に行きたい」って方のための駐車場を作りたいので、たくさん飲んでください!(笑)

——蔵とかは誰でも見学に行けるのですか?

はい、私がいればいつでも。田植えとかも玉旭酒造のfacebookページで告知するので、そこに「私行きます」「何名で行きます」ってコメントしていただければOKです。

——とっても簡単ですね!お問い合わせとかよりも敷居が低い感じ。

そうですね!

——2回にわたって楽しいお話をありがとうございました!

編集後記

カメラを向けるとバッチリ決めてくださる玉生さん。何のこだわりもなく酒造りをしていた頃から、本物の富山のお酒を目指し「オール富山」を確立させ、自分でお米を育てるまでに至った意識の変化がすごいですね!

また、銘柄・ラベルに込められた想いや経緯が一つひとつ深い!お客さんへの心遣いを忘れず、かつ小さな蔵だからこその親密な関係を築いている玉旭酒造さんはとっても魅力的でした。

ほぼ3人でやりくりする蔵でのエピソードはまだまだありそう。みなさんも、イベントなどでお会いしたときは聞いてみてくださいね!ラベルの曲がり具合いも要チェックです!(笑)

前編はコチラ
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