酒造りには「良い水」が大事!日本各地の酒造りに使用される『名水』まとめ | KURAND(クランド)
鈴木 將央

酒造りには「良い水」が大事!日本各地の酒造りに使用される『名水』まとめ

2016/05/08

美味しいお酒が出来上がる要素の一つに、「良い水を使っていること」が挙げられます。豊かな自然に恵まれた日本は、各地に「名水」と呼ばれる質の良い水を持っており、その水を使って酒造りを行う蔵元さんも沢山あります。

中には、環境省が指定する「名水百選」に選ばれた名水を使った蔵元も少なくありません。今回は、酒造りで使用されている日本各地の「名水」をご紹介します!
 

「名水百選」とは?

全国の清澄な水を再発見し、広く国民に紹介することを目的に、昭和60年に環境省によって選定された「名水」です。

「名水百選」における「名水」とは、「そのまま飲める美味しい水」という意味ではなく、「保全状況が良好」「地域住民等による保全活動がある」ということだそうです。

平成20年に新たに選定された「名水百選」を含めると、現在では、200箇所の「名水」が選ばれています。昭和に選ばれた名水を「昭和の名水百選」と呼ぶのに対し、平成に選ばれた名水を「平成の名水百選」と呼びます。
 
平成28年には、これらの名水の中から、「観光地」、「景観」、「秘境地」、「おいしさ」の4つの部門ごとに人気投票を行う『「名水百選」選抜総選挙』実施されました。
 
『「名水百選」選抜総選挙』の詳細はこちら

姫川源流湧水【長野県】

800px-Himekawa_River_headwaters出典:Wikipedia
 
「姫川源流湧水」は、長野県北安曇郡白馬村の山あい、小さな平坦部から湧き出ている清冽な水のことを指します。この湧水を源として「姫川」が始まっています。「古事記」では、糸魚川市付近を治めていた豪族の娘、奴奈川姫に大国主命が出雲から求婚しに来たという神話が残されており、この「奴奈川姫」が姫川の名の由来とされています。
 

この名水で造られている日本酒の銘柄

北アルプスの伏流水によって醸されている蔵に大雪渓酒造があります。明治31年の創業から、「地元の人に愛される酒を、より旨く」と志して造られる「大雪渓」は、その美しい水と、寒冷な土地を活かした飲み飽きない味わい深さがあります。

静岡県富士宮市の湧き水【静岡県】

静岡県富士宮市の湧き水出典:Wikipedia

静岡県はその山々の豊かさから、全国でも有数の名水どころとして名を馳せています。富士宮市の湧き水もその1つです。富士山南麓に位置する富士宮市は、富士山から時間をかけゆっくりと湧き出た水資源が豊富です。

この名水で造られている日本酒の銘柄

富士山のふもとに位置する牧野酒造では、富士山の柔らかい湧水と昔ながらの技法を使うことで、冷でも燗でも美味しく飲むことが出来るお酒を醸しています。代表銘柄は「白糸」「富士山」など、その地にちなんだ名前がつけられています。

白山伏流水群の湧き水【石川県】

1024px-百四丈滝出典:Wikipedia
 
白山伏流水は石川県白山市美川付近で湧き出る水の総称です。その水源は霊山白山連峰であり、手取川扇状地の地下を数十年以上の長い年月をかけて流れ、その先である美川地域に流れ出ています。

この名水で造られている日本酒の銘柄

江戸享保年間に創業した小堀酒造店は、この白山伏流水群の湧き水を使い酒造りを行っています。代表銘柄は「萬歳楽」。古来よりめでたい席で披露された舞楽の名前であり、その縁起のよさから広く愛飲されています。

吉野郡の湧き水【奈良県】

gorogoro1出典:洞川温泉観光協会

奈良県吉野郡周辺は、いくつかの湧き水に恵まれています。天川村洞川の「ごろごろ水」や「泉の森」などが有名で、地域による水質保全も行われています。中でも「ごろごろ水」に関しては、環境庁指定の「日本名水百選」、国土庁指定「水の郷34選」、奈良県指定「やまとの水」という、3つの分野から名水としての指定を受けています。

この名水で造られている日本酒の銘柄

奈良県吉野郡下市町下市に蔵を構える藤村酒造は、この名水を使って醸されています。当主自ら農家を訪ね選び抜いた好適米を使用したお酒は、手間暇と凝縮された技術とが詰まったものになっています。また、地元吉野産のフルーツを使ったリキュールなども販売されており、土地の人々に愛される蔵元ののひとつだと言えます。

御香水【京都府】

1024px-Gokosui_Water_Gokogu_Fushimi_Kyoto_JPN出典:Wikipedia

「御香水」は、伏見の伏流水を指します。平安時代から香りのよい良水が湧いたといわれていた伏見は、かつて“伏水”とも書かれていたほどに、質の高い伏流水が豊富な地として知られています。桃山丘陵をくぐった清冽な水が、水脈となって地下に深く息づき、山麓近くで湧き水となってあらわれていく天然の良水に恵まれたこの地では、日本を代表する酒どころとしても知られています。

この名水で造られている日本酒の銘柄

伏見には、質の高い酒造りを担う酒蔵が、「伏見酒造組合」として集まっています。協会に加盟する蔵の数は、「月桂冠」や「黄桜」といった市場になじみ深いものをはじめ、全部で23蔵あります。これだけの蔵元さんが集まるほど、御香水は良質で酒造りをするのに必要な名水だということがうかがえます。

宮水【兵庫県】

nadasyu出典:wikipedia
 
宮水とは、今の兵庫県西宮市の西宮神社の南東側一帯から湧出する、日本酒つくりに適していると江戸時代後期から知られている水です。 硬度が高く、リン成分が一般的な酒造りに使われる水と比べて10倍含まれており、カリウム、カルシウムも多いのが特徴です。リンとカリウムは酵母の増殖を促す働きがあるため、酒造りにも最適の水と言えます。

この名水で造られている日本酒の銘柄

酒造りに適した水質だけあって、この地には「菊正宗」「白鹿」といった蔵が構えられている、日本一の酒造業地帯です。「灘酒」と呼ばれるこれらは、業界の中でも名を馳せているものが多く、歴史と技術は勿論、躍進によって日本酒業界全体を引っ張る蔵元となっています。

阿蘇郡の湧き水【熊本県】

1024px-Mt.Aso_and_caldera01出典:Wikipedia
 
熊本県阿蘇郡の霊山・阿蘇山の広大な外輪山から、湧き出る山水は、飲用はもとより、醸造にも適した清冽な伏流水として古くから用いられています。広大なカルデラを持つ「阿蘇山」は、火の神と、開拓に燃える農耕の神とが、渾然一体となって宿っていると古くから考えられ、「霊山」と呼ばれています。

この名水で造られている日本酒の銘柄

山村酒造合名会社が造る阿蘇の酒、「れいざん」は、この水を使って作られています。阿蘇山が「霊山」と呼ばれたことを受け、その地で醸すお酒であることから「霊山」「れいざん」「寿安山」という名がついたと言われています。日本酒以外にも「碧露山水」という三十年貯蔵の本格酒粕焼酎も人気です。

両子山系の伏流水【大分県】

両子山伏流水出典:Wikipedia
 
両子山は、大分県国東市、国東半島に位置する標高720mの山です。この両子山をはじめとし、国東半島には火山群の峰々がそびえています。そこからの伏流水は、日本海側からの寒気によって冬場は冷え込みが厳しく雪も多いため、ゆっくりと地を伝い時間をかけて流れ出しています。

この名水で造られている日本酒の銘柄

大分県国東市に位置する矢野酒造場では、両子山の伏流水を使用した「松乃露」が醸されています。一貫した手作り醸造と、蔵元自らが杜氏として酒造りを担っており、大分県産米ヒノヒカリを主な酒米として使った、まさに地酒と呼ぶにふさわしい銘柄です。また、萱島酒造株式会社の「西の関」も、同じくこの地で造られて、名水によって醸されています。大分県国東半島に蔵を構えるこちらも、やはり約6割が大分県内でとれるヒノヒカリを使い、残りを福岡、広島、兵庫等の酒造好適米、八反錦、山田錦が担っています。

おわりに

いかがでしたでしょうか?水資源豊富な日本の中でも、より良い水のある場所に多くの蔵が軒を連ねていたり、その地域の人々に深く愛されているようです。日本酒を飲む際、「造られた水」と言う視点で見てみるのも、新鮮な見方かもしれません。今回ご紹介した日本酒は勿論、ぜひ、名水で醸された全国各地の日本酒を、味わってみてくださいね!