あなたは知ってる?日本酒で仕込む高級な日本酒『貴醸酒』が甘くなるワケ | KURAND(クランド)
鈴木 將央

あなたは知ってる?日本酒で仕込む高級な日本酒『貴醸酒』が甘くなるワケ

2015/09/14

貴醸酒について

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そもそも貴醸酒とは、日本酒づくりにおける※三段仕込みの最終段階である「留仕込み」において、仕込み水の代わりに日本酒で仕込んだ日本酒のことをいいます。それゆえ、コストがかかっている贅沢な日本酒といえます。
(※三段仕込みとは3段階に分けて酒を仕込む日本酒づくりの一般的な製法のことです)

飲んだことがある方はお分かりかと思いますが、甘くて濃厚でとろりとしていて上品な味わいが特徴的ですよね。その原料は主に米・米麹・清酒で、税務区分としては普通酒となります。

ちなみに、貴醸酒というのは貴醸酒協会という40社ほどが加盟している団体の「商標名」であり、この協会に加盟していないと貴醸酒という名前を使用できないそうです。よって、未加盟の蔵の貴醸酒づくりのお酒には再醸仕込み・醸醸・三累醸酒などの名前が付けられています。

 

 

貴醸酒の由来と歴史

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貴醸酒は、1973(昭和48)年に国税庁醸造試験所(現在の独立行政法人酒類総合研究所)で誕生しました。歴史が意外と浅くて驚きですよね。

当時の国賓の晩餐会では、海外から来るお客様をもてなすお酒はもっぱらフランス産のワインやシャンパン。なぜ日本の長い伝統ある清酒がこのような時に使われないのか?と疑問に感じた当時の国税庁醸造試験所の研究室長である佐藤信博士は「もっと高価な日本酒を造る必要がある。それには水の代わりに清酒を使用した清酒を造ってみよう」と考え、研究員らとともに開発。そして「貴腐ワインに比較されるタイプの高級日本酒」として『貴醸酒』と名付けられました。

ちなみに、酒で酒を仕込む貴醸酒のつくりかたは偶然にも平安時代の古文書「延喜式(えんぎしき・927年)」に記されている宮内省造酒司による「しおり」と呼ばれる古代酒の製法と同じだったそう。昔の人が現代にも通ずる優れた知恵と技術を持っていたことがわかりますね。

 

 

なぜ貴醸酒が甘くなるのか

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さてここからが今回の本題です。
日本酒は、麹の酵素がお米のデンプンを分解して糖に変える「糖化」と、清酒酵母がその糖を分解してアルコールに変える「発酵」を同時進行でおこなう『並行複発酵(へいこうふくはっこう)』というはたらきをします。

次に、清酒酵母は糖を分解してアルコールに変える(生み出す)わけですが、この清酒酵母は、発酵が進みある一定以上のアルコール度数(22度程度)になると、自分で生み出したアルコールによって徐々に弱っていき死滅してしまうという性質があります。発酵がゆるやかになって最終的には止まってしまうということです。

ここまではよろしいでしょうか?

通常の日本酒は三段仕込みで水・水・水と仕込みますが、貴醸酒の場合は水・水・酒と仕込むため、アルコールが足されることになります。したがって、本来であれば分解するはずだった糖を分解する前にアルコール度数が一定以上に達してしまい、清酒酵母が弱って(もしくは死滅して)、発酵がゆるやかになる(もしくは止まる)のです。分解されるはずだった糖はそのまま多く残るため、結果として『甘くなる』というわけです。

ものすごく省略して簡単にまとめますと、糖化のはたらきは変わらない、発酵のはたらきは仕込みで酒を入れることでゆるやかになる(もしくは止まる)、よって糖化のはたらきのほうが優勢になり、甘くなるということです。

貴醸酒が甘くなるメカニズム、お分かりいただけましたでしょうか。

 

 

貴醸酒のパイオニア&おすすめの貴醸酒

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出典:華鳩
全国で最初に貴醸酒をつくった蔵は、華鳩(はなはと)というブランドを展開している広島県呉市・榎酒造(株)現会長の榎さんという方で、貴醸酒が開発された翌年の1974年には製造を開始したそうです。積極的に新しい技術を取り入れられたのですね。その後は貴醸酒のパイオニアとして認知され、海外にもそのファンは多いのだそう。現在、榎酒造さんからは様々な貴醸酒が発売されています。

そして他にもオススメの貴醸酒はたくさんあります。今回こちらでは省略させて頂きますが、いまご覧頂いているKURANDの姉妹サイトであるNOMOOOのほうに掲載されてましたので、よろしければそちらをご覧ください。

 

 

まとめ

ここまで、貴醸酒についてと、なぜそれが甘くなるのか?を書かせて頂きましたが、いかがでしたでしょうか?日本酒の並行複発酵をご存知であればとても簡単なメカニズムなのですが、貴醸酒が甘くなる理由をご存知ない方が私のまわりに意外と多かったので、今回このような記事を書かせて頂きました。少しでもこれを読まれているあなたの知識の一助になれば幸いです。

貴醸酒は、ちょっと温めてじんわり頂くもよし・ストレート・ロック・ソーダ割り・アイスにかけるなど色々な楽しみ方ができるお酒です。特に日本酒に馴染みのない女性の方や甘口のお酒がお好みという方に、食前酒もしくは食後酒として飲んで頂くのがオススメです。機会があればぜひ試してみてくださいね。

これからも素敵な日本酒LIFEを♪

 

 

 

文:日本酒アンバサダー@大森慎

 

参考URL:缶詰技術研究会 月刊“食品と容器”2014年7月号406~407頁
シリーズ解説・日本の伝統食品(第15回 貴醸酒)より
http://kangiken.net/backnumber/5507_eturan.pdf