鈴木 將央

親子酒や大事な節目に飲むお酒を、大事に造りたい。だからオープンな酒造りを目指す|土田酒造 土田祐士さん

2017/03/17

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まだ飲んだことのない日本酒を飲むとき、どんな人がどんな思いで醸した日本酒か知って飲むと、日本酒はもっと美味しくなると思いませんか?そんな思いで始まった蔵元さんインタビュー、今回から2部編成の土田酒造・土田 祐士(つちだ ゆうじ)さんインタビューの後編です。

前回のインタビューでは、土田さんの蔵で遊んでいた幼少期から全く興味のなくなった青年時代、そしてお酒造りに再開して謎の囁きを聞くまでのエピソードをお聞きしました。

前編はコチラ

今回は、ものすごい信頼を置く杜氏との出会いと、二人三脚で挑戦してきたこと、そしてこれから挑戦していきたいことなどをお聞きしました!

心から信頼できる相棒との出会い。何年も探し求めた後味を、二人の熱意で掴み取る

——お酒造りで楽しいと思うのはどんなところですか?

前にいたデジタルの世界って0、1で消す作業なんですよ。ゲームでもキャラクターの色も髪の毛もこうして消しましょうって直せるんですけど、酒造りは後戻りできない。温度1度上げるにも悩んで決断して、全部あと引くわけですよ。ここに人間の時間と集中をかけること、消すことができないこの重さ、っていうのがすごく楽しいです。「あー、こうしてよかった」っていう重みが全然違いますね。

——パソコンの仕事って大体直せますもんね。

はい、それはそれでもちろんいいのですが、酒造りの絶対直せないところに、我々の意味があるんだろうな、そこに経験とかやってきた人生観が出るんだろうなって思っています。

——なるほど。今は経営などをされていますが、ずっと造っていきたいとは思いませんでしたか?

星野くん(現杜氏)と出会って、すぐに任せようと思いました。彼の方が私より酒造りに対する情熱があったんです。私は色んな仕事を抱えて迷いながら決断や判断をしなくてはならないので、酒だけに特化できないとわかっていました。星野くんの方が酒の気持ちが分かるのと、私の言うことも水が流れるごとく受け止めてくれるので、絶対星野くんの方がいい、私はそのお手伝いでいいって思いました。

——それはいつですか?

私が杜氏になって2、3年経った頃ですね。2年目くらいから任せていいんだろうなと思っていて、タンク1本造ってみない?と徐々に渡していきました。3年目くらいのときに吟醸も出品用も渡して、それも失敗しないで造れたので、もう任せると。早かったですね。

——ご自身で造っているときと、星野さんが造っている今のお酒と、土田酒造らしさに変わりはありましたか?

全然なかったですね。星野くんは楽しい+情熱、研究もするし和も大事にするんです。それが理想的だったので、私は星野くんに「どんな人が来ても星野くん以外は杜氏にするつもりはない」と宣言しています。たとえどんなスーパースターが来ても、杜氏にはさせない。星野くんに任せると言い切っています。

——その信頼関係はすごいですね!

そこは道を迷わないと思っているのでね。


写真:杜氏の星野元希さん

——素敵なお話ですね。そのあと、そこから少しお酒造りに苦労されたという話をお聞ききしました。

はい、去年まで「お水が残るような後味」っていうのを目指していました。好きな方もいますが、渋さや苦さが最後に残るとどうしても次につながらないんです。後味が水みたいだと、もう一杯もう一杯ってなるんですよ。いくつかの酒蔵さんのお酒がそうなのですが、どうすればなるのかわからなくて、ずっと探し求めていたんです。

——「お水が残るような後味」ですか。

はい。諸説聞いて色んなことをしましたが、全然だめで全くわからなくなりました。もはや瓶詰めじゃないかとか(笑)あらゆる手をつくしてもわからなくて星野くんに任せたのですが、彼もやっぱり大多数ができなかったんですよ。これなんだろうねって言いながら潜伏期間が3、4年続きましたね。

——何がきっかけで成功したのですか?

「なんだコレは?!こんな感じだよね!」っていうお酒に出会ったんです。その頃、原酒だけど度数が低いものも同時に目指していたんです。度数が15度くらいだと体の細胞が受けるダメージが少ないらしいので、原酒でも15度以下にしたいと思って。出会ったそのお酒は原酒で15度以下だし、後味は切れる。「なんじゃこりゃ!」と(笑)

——へえ、本当にすごかったのですね!

もうこれは習いたい、と思ったときにたまたま講習会があったんです。その日は先生にお酒を評価してもらう大切な年間行事だったので「こっちはやるから行ってこい、ずっとひっついているんだぞ」と星野くんを行かせたら、「きみおもしろいね。いいよ、蔵に来て」と言われて。

——すごい、熱意が伝わったのですね!

はい、後日その時蔵に行ったのは星野くんと私だけでした。そこで色々お話を聞いて教えてもらい、それを星野くんがやったら劇的に変わったんです。それが二人の間で麹と酵母の気持ちがやっとわかってきたときでしたね。今までは声を聞いているつもりでも全然わかっていなかった。

——酵母の気持ちですか。

そう。知識を入れて更に深まったことで「麹がこういうことをしているときに何が起きているのか」っていうのがやっとわかってきて。ここで温度を上げたらこうなるよね、ここは下げたほうがいいよねっていうのが、言語化できるようになってきたんです。

——なるほど!

幾つかの蔵に聞いてみましたが、誰もやったことのないことでした。私はイノベーションが大事だと思っているので、やってだめだったらいいじゃん、責任取るからとにかくやっちゃえって。そしたら去年、出品した純米大吟醸で群馬でも全国でも入賞して、関東甲信越国税局酒類鑑評会では197本中うちだけが純米大吟醸で入賞したんですよ。

——すごい、大きな飛躍ですね!

目指すのはなんでもオープンに見せられる酒造り。凄まじい決意で純米を極めることに

——「鑑評会で賞を取れなかったら坊主になる」という熱意あふれるお話を聞いたことがあるのですが、本当ですか?

はい(笑)ただ、最初は賞を全然取る気が無かったんですよ。香りがあって甘い酒がトレンドだけど、あんまり香りが高くなって崩れてもしょうがないし、無理しないで取れればいいなぁって程度で。周りの蔵も「土田さん取る気ないんでしょ、出してるだけでしょ」って。

——どうして取ろうと決めたのですか?

純米を極めたいと思ったからです。私が目指しているのはなんでもオープンに見せられる酒造りなんです。技術を隠すのはかまわないけど、やってることを隠すのは後ろめたい。実は私がアル添はちょっと見せられない作業だと思ってしまったので、遅くても再来年にはやめるつもりです。入れたことはありませんが、たとえば出品する大吟醸も、甘みを出すために酵素剤というのを入れてもいいんです。でもどこか後ろめたくて、誰も「酵素剤入れてます」って堂々と言わないんです。それで賞取って楽しいのって思っていたんですよ。

——なるほど。

それって技術でも何でもないじゃんって。じゃあ全部オープンで造りを見せられる純米で取りたいなと思ったんです。大変だけどこれで勝とうって。だけどそこにいくには不退転の決意が必要だ、じゃあどうする?取れなかったら坊主になるかって、安易なんですけど(笑)

——すごい決意ですね(笑)

はい、大きな決意をするには坊主にするくらいの意気がないと。それで酒販店さんとか得意先の方に配ったんです。我々はこういうつもりでやります、取れなかったら坊主になりますよって。

——二人の間だけの約束ではなくて表に出して覚悟を見せるのはすごいですね。それはいつですか?

取りに行こうって決めたのが一昨年の7、8月くらいですね。去年の春に結果が出て、入賞はしたんですけど金賞ではなかったので、そこは約束通り二人で坊主にしましたね(笑)

——そうだったのですか!でもそこで成功してしまったらつまらなかったかもしれませんね。

おっしゃる通りですね。失敗したから今年につながっているので、色々学べました。悪ふざけはもういいかなって思っていますけどね(笑)

——そうですね(笑)山廃とかも純米と似た感じでしょうか?

そういうことです。山廃は自然の力に頼っていてオープンにできるので。山廃ははじめてやったときに星野くんと「これ本当に酒になるんですかね」ってドキドキ感を味わったんですよ。祈るように待って、はじめて反応があった瞬間に「おおおーー!」ってなりました(笑)そのとききっと千年前の杜氏もこうやって祈るように造っていたんだ、と酒造りの昔の人の気持ちもわかったんです。

——なるほど、確かに。

多少化学の力に頼ってわかると言っても、これ大丈夫かなって思うのってやっぱりいいよねって。そうすると神様にも感謝するし、スタッフ同士で喜ぶし、使う道具も大事にする。そこって原点なんじゃない?って。自然に感謝する造り方にして、みなさんと共感して、っていうのは目指したいと思いますね。

酒は人をつなぐもの。親子をつなぎ、心の平和を取り戻す「親子酒」を造りたい

——蔵に戻る前のエピソード(前回)をお話されているときよりも、今の酒造りのお話をされるときの方がわくわく感が違いますね!

酒の可能性を感じたからでしょうね。前は飲めない、つまらないって思っていたけど、飲むことで人が楽しくなって、言えなかったことが言えるようなところを見てきて、人をつなぐ潤滑油のような、絆をつなぐ酒っていうイメージが沸いたんです。「社会に貢献してんじゃん」って。

——そうですね。

そんな酒を提供して、ちょっとでも「また明日も頑張ろう」と思ってもらえたらすごく社会的に意味がある産業だな、と思ったんです。みんなが「わあ、これ美味しいね」って言ってくれるようにもっともっと進化していかなきゃいけないなと。

——それは業界的にもですか?

そうです、業界としても時代に置いていかれないように進化しないといけない。新しいことにどんどん着手しながら、みなさんが求める楽しみ方と私たちの造りたい酒が合致するようなものを見つけていく。今までみたいに造り手だけの思いじゃなくて、お客さんの気持ちを知る。そういうことをもっと日本酒蔵は積極的にやらなければいけないんだろうなって思っています。

——なるほど。お酒を通して人生観とかが変わったのではないですか?

そうですね、一つ「親子」特に父・息子が飲める酒っていうのを目指すようになりました。私の父が独特なので、私の中では気軽に酒が飲める存在ではないんです。意外と周りにも「親父と飲むって意外と敷居が高いよね」って人も多くて。でも、みんなやっぱり本当は父親のことが好きで、一緒に飲んで酔っ払って他愛もない話ができたらなぁって共通に欲しているんじゃないかなって。

——そう思っている方は多いと思います。

「飲んでおけばよかった」って後々悔しい思いをするのではなく、「ああ、楽しく話せた」って父子で一緒に飲める「親子酒」みたいな酒をご提供したくて。そうすると二人で抱いていたイガイガが取れて心がスッキリして、また生きる力になる。そしてトゲが取れて、次の子どもが生まれたときにわだかまりなく子育てができるんじゃないかと思うんです。

——なるほど、お酒を飲めない子どもにもつながるんですね。

そう。まず父親と仲良くなって、次の世代と仲良くなることで今みたいな子どもの悩みも少なくなるんじゃないかな、それが争いを減らして世界平和につながっていくんじゃないかと。酒を通して子どもたちの心の平和を取り戻せるといいなって。そんな環境やお酒ができたらいいなというのが、ひとつ私の中でのプロジェクトです。

——深いですね…!

一緒に飲んで、次は蔵に行って酒造りをして「来年一緒に飲もうね」とか、展開が広がるわけですよ。そんな風に親子をつなげる蔵でありたいと思って、祭りで子どもさんが遊べるゲームをしたりしています。酒だけじゃないことをして「なんか家族が楽しめたよね」っていうところになるといいなって。そうすると、オープンにしている意味があるんじゃないかと思います。そこに「これは見せられないんですけどね」っていうのはNOなんですよ。

——そうですね。

だったら堂々と酒をオープンにしてみなさん飲んでください!って言いたいから、少なくとも絶対みんなに見せられるものを造りたい。純米が今のところの結論なんです。

日本酒は節目。一日の終わりに「またいい明日につながるね」と飲んでもらえる酒を

——最後の質問になりますが、土田さんにとって、お酒って何ですか?

日本酒は節目だと思っているんです。

——節目。

子どもが生まれたお祝い、七五三のお祝い、成人式、一日の終りでもいいんです。何かの節目として「良かったね、またいい明日につながるね」ってみんなで楽しく飲む。そういうときに飲むお酒は日本酒っていうようなマインドが日本人にはある気がして。はじめて、久しぶり、結婚式、お葬式、そういう場面に日本酒があって欲しいですね。

——イメージは合いますよね。

そうですよね、でもそのためには今のマーケティングの仕方じゃだめなんです。スペックがどうだ、何がどうだ、じゃないんです。それじゃ他の酒に負ける。各蔵がどういう思いで造っていて、みなさんにこういう場面で飲んでほしいんだって言わない限りだめなんです。

——確かに具体的な節目を強調した日本酒ってあまりないですね。

節目節目で日本酒を思い出して、やっぱりこういうときは日本酒だよね、って思ってもらうには、今お客さんに寄り添わなければいけないんです。

——節目に飲んでほしいという思いと、オープンにしたいという思いがつながりますね。

やっぱり節目の大事なときにはオープンで純粋なものをご提供したいですよね。みなさんの大事なときに大事な酒がある、だから大事に造ろう。そういうところに行き着くのかなって思います。

——いいですね!読者のみなさまに一言お願いします!

KURANDさんは色々飲めるという要望を叶えながら、自分の楽しい酒を見つけるシステムです。我々はそこに対して、こういう場で喜んでいただけるのはどういう酒なのかって研究して、やっぱりみなさんには楽しんで飲んでいただきたい。「今日来てよかったね、また明日頑張れるね」って思っていただけるよう、これからもみなさんのお顔を見ながらご提供していきたいな、と思っています。

——素敵ですね!2回に渡って楽しいお話を、ありがとうございました!

編集後記

明るく周りを引き込む土田さん。子どもの頃に親方の膝に座って皆をなごませていたというお話も納得です。蔵に遊びに行っていた頃と青年時代のギャップや、造りの最中に聞こえる囁き、決意表明の坊主宣言など、驚きのエピソードが満載でしたね!

土田さんと星野さんのお酒に対する追求心や情熱は並大抵ではありません。「オープンな酒造り」「親子酒」「節目に飲む大事なお酒」…どれもみなさんのお酒を飲む場面を思い描きながら、自分たちが造りたいお酒と合うものを探す、という土田さんのスタンスが見えてきます。これからの土田酒造さんのお酒も楽しみですね♪
 
4月1日(土)にKURAND SAKE MARKET新宿店で「群馬・土田酒造飲み比べの会」が開催されます。「エイプリールフールだけに、何かが起こります。というか起こします(笑)」とのこと。気になりますね!興味のある方はぜひご参加くださいね!

 
前編はコチラ
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