試行錯誤の上、誰にでも本当に飲みやすい日本酒を。|滝澤酒造 滝澤英之杜氏 | KURAND(クランド)
鈴木 將央

試行錯誤の上、誰にでも本当に飲みやすい日本酒を。|滝澤酒造 滝澤英之杜氏

2018/10/19

まだ飲んだことのない日本酒を飲むとき、どんな人がどんな思いで醸した日本酒か知って飲むと、日本酒はもっと美味しくなると思いませんか?そんな思いで始まった蔵元さんインタビュー、今回はKURANDでも人気の「CRAFT SPARKLING SAKE(クラフトスパークリングサケ)」醸造元の滝澤酒造・滝澤 英之(たきざわ ひでゆき)さんのインタビュー、前編です。
 
前回のインタビューに引き続き、2回目のインタビューを実施させていただきました。今回のインタビューでは、KURANDで大人気の「CRAFT SPARKLING SAKE」の開発経緯、製造される上で苦労されたことをお聞きしました!
 

 

このお酒から、もっと色々な日本酒を知ってほしいという思いで


ーーそれでは、よろしくお願いします。
 
はい、よろしくお願いします。
 
ーー本日は、過去のインタビューを踏まえ、KURANDオリジナル商品である、「CRAFT SPARKLING SAKE」についてお聞きしたいと思います。それでは早速、「CRAFT SPARKLING SAKE」の開発経緯をお伺いします。
 
私は大学卒業後、東京都のとある酒蔵で働いていました。そこで酒造りをさせていただきつつ、醪(もろみ)の分析を行っていました。ときには、醪(もろみ)の分析をしながら、試飲をすることもありましたね。
 
その中で、日本酒の発酵途中に生じる独特な香りや味わい、甘みや酸味、そして発酵途中ならではの炭酸ガスが発生している状態に魅力を感じ、これを商品化したいなと思ったのがちょうど20年くらい前の話です。
 
そういった思いから、はじめて商品化したのが「彩のあわ雪」という商品なのですが、「彩のあわ雪」よりも、しっかりしたボディのお酒を造りたいと思い、KURANDさんと一緒に開発したのが「CRAFT SPARKRING SAKE」です。
 
ーーなるほど。もともとスパークリング日本酒を造りたいと思って商品化されたということですが、なぜKURANDと共同開発する日本酒にスパークリング日本酒を選ばれたのでしょうか?
 
日本酒のスパークリング日本酒が流行り出したのはここ数年ですね。そのブームの火付け役となったのは岩手県の一ノ蔵の「すず音」だと思います。正直最初はそれに触発されてスパークリング日本酒の開発を始めたというのもありますが、そもそもスパークリング日本酒って、日本酒の取り掛かりとしてはとても手に取りやすいと思うんです。スパークリング日本酒は数も少ないですし、日本酒=飲みにくいという印象を、スパークリング日本酒という新たな切り口を設けることで、若い人たちがより日本酒に親しんでもらえるかと思ったんです。

KURANDさんの直営店の「KURAND SAKE MARKET」のお客様は、比較的若い方や日本酒を飲み慣れていない方も多いですし、KURANDさんと一緒に商品開発をするなら、スパークリング日本酒がいいのでは、という話になりました。比較的若い方や日本酒を飲み慣れていない方に、日本酒に親しんでもらえる取り掛かりとして、スパークリング日本酒は有効なのではないか、ということも話してましたね。
  
ーーそもそも、「スパークリング日本酒を造ろう」と話になったキッカケはなんだったんですか?

実は、「CRAFT SPARKLING SAKE」という商品を開発する前に、KURANDさんと一緒にスパークリング日本酒をつくっていたんです。「どす恋スパークリング」という商品なんですが、「どす恋スパークリング」は「彩のあわ雪」の兄弟品にあたるスパークリング日本酒で、それをKURANDさんで取り扱ってもらっていました。

そんな背景のなか、とある社員さんが、「どす恋スパークリング」をとても気に入ってくれていて、KURANDさんとのオリジナル商品として発展させようというのがキッカケですね。
 
「どす恋スパークリング」と「CRAFT SPARKLING SAKE」の違いは、アルコール度数の違いです。「どす恋スパークリング」は8%ですが、「CRAFT SPARKLING SAKE」は12%です。どちらのお酒も、飲みやすいのは変わりないのですが、「CRAFT SPARKLING SAKE」のほうが、従来の日本酒にアルコール分を近づけたという感じですね。
 
ーーなるほど。そんな経緯があったんですね。
 
日本酒の良さ、というのはアルコール分にあると思うんです。日本酒は他のお酒に比べて比較的アルコール度数が高いです。しかし、原酒のような濃い味わいだと、日本酒の取り掛かりとしては難しいと思います。逆に、スパークリングのお酒というのは、比較的アルコール度数が少ないですよね。
 
「CRAFT SPARKLING SAKE」は、ちょうどその中間を狙った商品です。従来の日本酒と、その当時流行していたスパークリング日本酒の中間をとりました。実際に、「CRAFT SPARKLING SAKE」をはじめとして、いろいろな日本酒の良さを知ってもらいたいと思って造りましたし、今でもそう思っていますね。
 
ーーそもそも、アルコール度数の調整は簡単にできるものなんでしょうか?
 
度数のみの調整というのは簡単にはできますが、味のバランスを考えた時に、設計の時点から考えて造らないとできないのです。最初から「このお酒は◯%で仕込む」と考えた上で造らないと、その通りにはできません。
 
ーーアルコール度数12%と低めにしながらも味わいを残すためには、あらかじめの設計が必要ということですね。
 
そうですね。具体的には、仕込み配合だと、麹は◯%入れる、とか、発酵は◯度で仕込む、◯度で発酵するという感じです。
 

試行錯誤の上、本当に飲みやすいスパークリング日本酒へ。


ーーアルコール度数12%のスパークリング日本酒の開発は、滝澤酒造さんにとって今までにない新たな取り組みだったと思うのですが、苦労もあったのではないでしょうか。

「彩のあわ雪」を発売したのが2010年で、「CRAFT SPARKLING SAKE」は2016年からKURANDさんで取り扱ってもらいました。なので、2010年から2016年の間、スパークリング日本酒の製造で試行錯誤していました。
 
特に苦労したのが、ガス圧の調整ですね。「彩のあわ雪」も、「CRAFT SPARKLING SAKE」も、瓶内二次発酵をしています。この瓶内二次発酵というのは、お酒のアルコール分が高いと進みません。しかし、瓶内二次発酵が進み過ぎてしまうと、アルコール度数が高くなってしまい、かつ酵母は炭酸ガスを発生させるので、ガス圧も高くなってしまいます。
 
このガス圧が高くなりすぎてしまうというのが問題で、それによって吹きこぼれが生じてしまいました。なので、ガス圧の安定感というのは当初本当に苦労しましたね。
 
ーーなるほど。苦労が伺えますね。
 
また、かつてはねじ式のキャップを採用していたのですが、このタイプの方が吹きこぼれが起こりやすいです。実際に、お客さんがお酒を買ってくださって家に持って帰る間に、カバンの中で溢れてしまったというお叱りをいただきました。そこで、どうしてガス圧が高くなってしまったのかを再度検討し、二次発酵の温度や、澱(おり)の量が適切なバランスなのかを試行錯誤しました。
 
天然酵母が発酵する際に生じるガスなので、今でも試行錯誤している部分はあります。成功した時の温度帯と、たった1度違う温度で二次発酵をするだけでも、かなり吹きこぼれてしまいます(笑)

ーーそうなんですね。ガス圧が高いと吹きこぼれが発生しやすくなり、ガス圧が低すぎると、発砲感が少なくなるということでしょうか?
 
「CRAFT SPARKLING SAKE」のガス圧はあまり強くはしていないのですが、ある程度の爽快感を持たせるといった意味でガス圧を調整しています。ガス圧は「気圧」で表します。例えば、ビールは2気圧。シャンパンは5.5気圧。「CRAFT SPARKLING SAKE」は2.5気圧。なので、シャンパンの半分くらいですね。このように適度なガス圧を保つことによって、爽快感を持たせることが目的です。
 
ーーなるほど。
 
専門的な話になってしまうのですが、澱が残っている濁った状態で瓶に詰めて二次発酵を進めると、酵母がお酒の中の糖分を食べて発酵を進めるので、辛口のお酒になってしまいます。
 
「CRAFT SPARKLING SAKE」の兄弟商品である「ひとすじ」という商品があります。「ひとすじ」は澱を取り除いていて、ガス圧が「CRAFT SPARKLING SAKE」よりも高めです。だいたい4〜5気圧です。なので、シャンパンに近めですね。お酒の甘さでいうと、「CRAFT SPARKLING SAKE」の方が甘いです。これは、ガス圧が高くないことで甘みが残っているということですね。
 
ーーガス圧が強いと辛くなり、弱いと甘くなるということですね!
 
そうですね。あとは詰めた時の日本酒の成分も重要です。「CRAFT SPARKLING SAKE」は、日本酒度(甘口か辛口かをさす度数)が最初は大体−55度くらいで詰められます。そこから発酵していき、−44度まで下がり、ガス圧も2.5気圧までになります。
  
ーーなるほど(難しい)。
  
瓶内二次発酵というのは、進めれば進めるほど日本酒度が+に近づいていくのと同時に、アルコール分も高くなってきます。最終的にガス圧が上がってくると、12度に近づいてくるということですね。
 
ーー話が逸れてしまいすみません。造りの過程の中で、ガス圧に非常に重点を置いて造られているのですね。

そうですね。そのポイントというのが、瓶内の温度と、澱の量です。
 
ーーちなみに、開封するまでの間に、暖かくなったりすると瓶内の気圧に関係してくるのでしょうか?
 
基本的にそういったことはないです。瓶内二次発酵をして、ガス圧が2.5気圧くらいになったら冷蔵庫に入れます。その時点で発酵は止まってしまいます。そこで置いておくと酵母の発生というのは無くなるので、冷蔵庫から出しておいても酵母の活動が始まるということはありません。
 
いわゆる酵母が死滅している状態です。にごり酒でも、火入れするとそこで酵母は死んでしまいますが、生でもしばらく冷たいところに置いておくと酵母の働きはそこで終わります。
 
ーーそうなんですね!一般的に「火入れ」と聞くと、熱処理をして酵母を死滅させるものだと思っていました。一定期間冷やしても、酵母は死滅するんですね。
 
死滅というのはイメージが悪いので、活動が止まるといった方がいいかもしれません(笑)一般的に日本酒は火入れを行うのが普通です。生でも火入れをせずに冷蔵保存すれば酵母の活動は停止しますが、やはりリスクは否めません。
 
ーー火入れだとすぐに活動を停止させることはできますが、冷蔵だとゆるやかな活動停止になるということですね。
 
はい。あとは火入れだと味の変化もありますね。
 
ーーたしかに。
 

「小さな蔵が、全てを手造り」、を象徴するお酒


ーー話が逸れてしまい、すみません。ここから仕切り直しです。「CRAFT SPARKLING SAKE」はどのようにしてネーミングが決まったのでしょうか?
 
この名前は、KURANDさんとの話し合いの中で決めました。実際に手造りで小さな蔵で造っているので、手造り感を出したいというお話に行きつきました。そこから、小さな蔵が手造りで飲みやすいスパークリング日本酒を造っているという点から、「CRAFT」という名前がつきました。
 
ーーそうなんですね。最終的には「CRAFT SPARKLING SAKE」という商品名になったわけですが、ライベルが刷り上がって、完成品を見た時の第一印象はどうでしたか?(笑)
 
日本酒の名前って日本語が多いじゃないですか。なので、あまり英語の綴りという点はピンとこない部分もありました(笑)しかし、出来上がったラベルを見て、手造り感があっていいな、と思い、初めてしっくりきました。最初、「文字も長いし覚えづらくないかな?」と思いましたが…。
 
ーーこれは余談なんですが、出荷する時や蔵で作業している時に、「CRAFT SPARKLING SAKE」の名前を話す際に、略したりはするんですか?
 
一応長いですが、「クラフトスパークリング」といいますね(笑)
 
ーー独自の略し方とかあるのかな?と思ったので(笑)KURANDスタッフの中でも略し方とかないので、いい略し方、募集中です(笑)
 
よろしくお願いします。
 
いかがでしたでしょうか。酒蔵に勤務されて間もない頃に着想を得て商品化を目指していたという滝澤さん。「CRAFT SPARKLING SAKE」は、長期間の試行錯誤の上に製造された商品なのですね。甘口でフルーティー、なおかつとっても飲みやすい「CRAFT SPARKLING SAKE」をぜひ皆さんお試しくださいね。
 
次回も様々なお話をお伝えしますので、お楽しみに!
 
「CRAFT SPARKLING SAKE」の詳細・購入はコチラから