
日本酒業界最大のコンテスト『全国新酒鑑評会』の審査方法とは?
2015/06/29
全国新酒鑑評会とは
そもそも全国新酒鑑評会とは1911(明治44)年から現在まで100年以上続く歴史のある日本酒における新酒の鑑評会のこと。酒類総合研究所(旧・国税庁醸造研究所)と日本酒造組合中央会が共催しており、その目的はお酒の品質を全国規模で調査・研究し、醸造技術と酒質の現状や動向を明らかにし、品質の向上に貢献することで国民の清酒に対する認識を高めることとされています。
この鑑評会に出品する条件
どの蔵元でも基本的に自由に出品することができ、酸度が1.0以上の吟醸酒であることが出品酒の資格条件です。各蔵元が鑑評会に出せるお酒の数は、酒造免許をもつ製造場(蔵)につき1つ。
いくつもの製造場(蔵)をもつ大きなメーカーは複数の酒を出品できますが、1つの蔵しかない小さな蔵元は1点しか出せないということになります。出品酒として各メーカーから送付されたお酒は、分析・審査用に4本、製造技術研究会用に6本仕分けされ、いずれも12℃の環境で別々の場所に保管されるとのこと。
審査過程は2回ある
出品されたお酒はまず予審という予選審査が行われ、そこで優秀と認められたものは入賞酒となり決審という決勝審査へ進みます。そしてこの入賞酒のなかでも特に優秀と認められたものが晴れて金賞となるわけです。
予審と決審はどちらも利き酒による官能審査が主体で、審査前には基準となる試料で香味を確認。そして香気成分(カプロン酸エチル)濃度によるグループ分けをしたのち、香りの低い区分から審査をしていきます。酸度や香気成分についての科学的分析なども行なわれるとのこと。予審の時期は毎年4月下旬の平日の3日間、決審は5月中旬ごろの平日の2日間です。
誰が審査をしているのか
審査は、酒類総合研究所(旧・醸造研究所)、国税庁や地方国税局の中のセクションのひとつである鑑定官室、各県醸造試験場等などの技術関係者や、酒造メーカーの社長や杜氏など、いわゆるお酒のプロフェッショナルたちが担当。予審は45名、決審は24名で行われます。
どのように審査しているのか(予審編)
予審では1班15名の3班制で、予審用の審査カード(上の画像)に沿って味と香りを評価。難しそうな項目がたくさんありますね。
評価の必須項目として・香りの品質・華やかさ・味の品質・濃淡・あと味や軽快さがあり、そして最後に総合評価として・すばらしい・良好・どちらでもない・やや難点・難点ありの5段階評価を下します。
1回の審査では50アイテム以下、1日あたり150アイテム以下と決められていて、審査と審査の間には20分以上の休憩が設けられます。
どのように審査しているのか(決審編)
決審では、予審と違って1班24名体制で審査。決審用の審査カード(上の画像)に沿って1・2・3という3点法の総合評価のみを行います。予審の審査内容と比べるとかなりシンプルですよね。
ちなみにこの決審に進んだ時点で入賞酒となりますが、過半数以上の審査員が入賞外にチェックをすると、入賞は無くなるそうです。このケースはごく稀とのこと。1回の審査では予審と同じ50アイテム以下、そして1日あたり250アイテム以下と決められていて、審査と審査の間は10分以上の休憩が設けられます。
審査で使うアイテムとは?
画像出典:Duralex公式HP
この審査では「アンバーグラス」というグラスを使います。アンバーとは琥珀を意味し、その名の通り琥珀色のグラスのこと。てっきり日本酒の品質を確かめるときに用いる“きき猪口”を使うものだと思っていたので、これにはとても驚きました。このグラスを用いるのは、審査の際、色による先入観を持たせないためだそうです。
審査する部屋やお酒の温度管理について
日本酒はご存知の通り温度によって風味が大きく変化します。じゃあこの鑑評会の審査では温度管理はどうしてるの?と気になりますよね。
審査する部屋は、無風で直射日光の当たらない部屋を使用し、温度は20℃前後に保持され、お酒も18~20℃に保持されて審査するとのこと。4~5月の平均的な室温がこれくらいで、この室温環境だと審査の際に最初から最後までお酒の温度変化の幅を最小限に抑えられるんだとか。
個人的には少し温度が高いような印象も受けましたが、何百ものお酒を審査するとなったときにすべてを低温で一定に保つのは困難ですからね。理由を知って納得です。
平成26酒造年度の新酒鑑評会の結果
今年は852点の出品があり、415点が入賞、うち222点が金賞という結果でしたね。原料米が醪によく溶けやすかったことが要因となり、例年の傾向よりも日本酒度の数値が低く全体的に甘めの酒質だったとのこと。
この鑑評会の審査・評価結果は出品した蔵元にすべてフィードバックされ、今後の酒づくりに活かされるそうです。
最後に
ということで今回は全国新酒鑑評会における審査方法に重点を置いて記事を書かせて頂きましたが、いかがでしたでしょうか?少しでも読者様の知識のお役に立てたのであれば幸いです。
この鑑評会に出品された吟醸酒は、各蔵の努力や想い、そして最高の技術によってつくられた素晴らしい日本酒ばかりです。自然の恵みや蔵人たちへの感謝の気持ちを持って、これからも日本酒と向き合っていきたいですね。
文:日本酒アンバサダー@大森慎
参考文献:日本名門酒会公式HP、独立行政法人酒類総合研究所公式HP
情報提供:酒類総合研究所 品質安全性研究部門長 藤井 力様
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