
【酒のアテにはたまらない】日本各地の有名珍味まとめ
2022/05/12
みなさんは日本酒を飲む時、何を肴(さかな)にしていますか?
日本には、各地にその土地ならではの料理や珍味が存在しています。
長く保存がきくように、捨ててしまう部位を美味しく食べられるように、先人の知恵が詰まった珍味は、お酒にも抜群の相性を発揮します。
今回は、今晩の肴にしたいものから、その土地を訪れた時にぜひ味わっていただきたいものまで、日本各地の珍味をご紹介します。
このわた【愛知県・三河湾/三重県・伊勢湾】
「このわた」とは、ナマコのはらわた(腸)の塩辛のことを指します。
尾張徳川家が師崎のこのわたを徳川将軍家に献上したことで知られ、江戸時代の三大珍味として名高く、「長崎奉行の持品のからすみ、尾張公の持品のこのわた、越前公の持品の越前雲丹」と称され、ウニ、からすみと並び、今も日本三大珍味の一つに数えられています。
日本酒とよく合う酒肴として古くから愛されていたことがわかります。伊勢湾、三河湾などが産地として知られていましたが、現在は瀬戸内海や能登半島など各地で作られています。
からすみ【長崎県】
上の「このわた」と同じく、三大珍味の1つであるからすみは、もともと、ボラの卵巣を塩漬けにし、塩を抜いた後に天日干しで乾燥させたものを指します。
発祥の地・長崎ではボラを用いるものの、香川県ではサワラやサバを用いるなど、地域によって使う魚が異なります。
というのも、からすみは古くからギリシャやエジプトなどで造られ、日本には、安土桃山時代に中国から長崎に伝来したといわれているため、日本以外にも台湾、スペイン、エジプトなど世界各地で、その地の海産魚の卵巣を用いて作られていることが起因と考えられます。
白いご飯をはじめ、お酒に合う酒肴として、古くから用いられています。
ほや【宮城県】
ほやは、海中に住み、プランクトンを濾過して食べて生きる海の生き物の1種です。
ほやという名は、「ランプシェードに当たる火屋(ほや)に形が似ている」ことや、「ヤドリギ(ほや)にそのかたちが似ている」ことからつけられたとされています。
ほやは日本、韓国、フランス、チリなどで食材として用いられており、日本では主にマボヤ科のマボヤとアカボヤが食用にされています。
古くからホヤの食用が広く行われ多く流通するのは主に東北地方北部沿岸で、水揚げ量が多い石巻漁港がある宮城県では酒の肴として一般的に食卓に登場していたそうです。
くさや【東京都・伊豆諸島】
くさやとは、魚類の干物の一つで、新鮮なムロアジ類、トビウオ類、シイラなどの魚を使用した干物であり、伊豆諸島の特産品としても知られています。
開いた新鮮な魚を、「くさや液」と呼ばれる浸け汁に8~20時間ほど浸け込み、くさや液をよくなじませてから真水で洗浄し、天日に1~2日ほど干して完成です。
この「くさや液」には、乳酸菌の一種であるコリネバクテリウム・クサヤ(クサヤ菌)、酢酸、酪酸、プロピオン酸などの有機酸が入っており、特徴的な香りを醸しだします。
古いものほど旨味が出るとされており、くさや液の製法は各製造店の秘伝として、代々受け継がれています。
独特の匂いがするため、通常の干物と同じく焼き調理を行う際には、周囲に十分配慮しなくてはならない、など注意点も多く、好き嫌いも分かれるものですが、個性のある強い味わいから、日本酒や焼酎などによく合うとされています。
へしこ【福井県】
へしこは、鯖を塩漬けにした後、さらに糠漬けにした、福井県の郷土料理を指します。
「へしこ」という名前は、漁師が魚を樽に漬け込むことを「へし込む」と言ったことから、「へし込まれた物」を略して「へしこ」となった説、魚を塩漬けにする際に滲み出てくる水分を「干潮(ひしお)」と呼んだものが訛ったものであるとする説、アイヌ語に由来する説など多くあります。
寒さの厳しい地方で、冬の保存食として古くから重宝されていたへしこは、現在では特産品として流通、漬け込む魚の種類も「鰯へしこ」「河豚へしこ」などが加わって親しまれている。
糠を落とし、火であぶったものは酒肴としても名高い1品です。
酒盗【高知県】
酒盗とは、魚の内臓を原料とする塩辛のことを指します。
「盗まれるように酒がなくなっていく」、「酒が無くなったら盗んででも飲みたくなる」ほどに、お酒の肴として美味かったため、「酒盗」という名がついたという説もあります。
広く知られ名産品として名高いのは、高知県で作られる鰹を使った酒盗です。鰹の内臓は魚の体が4~5kgに対し、50gの内蔵を取ることができ、もともとは生利節を製造する際に大量に出る内臓を、漁師や加工業者が塩辛にして食べていたものが始まりであるとされています。
現在では多くの地域に普及し、クリームチーズと和えたり、煮物の隠し味としても利用されるなど、幅広く、酒肴として愛されています。
アンコウの肝【茨城県】
いわゆる「あん肝」、お酒好きなら誰しも1度は肴にしたことがある珍味の1つではないでしょうか。
アンコウの肝臓を成型して蒸したものを指し、「海のフォアグラ」と呼ばれることもあります。
アンコウは、日本近海の水深100~ 300mの砂泥底に生息している深海魚で、「食べられないところがない」と称されるほど、身はもちろん、皮や内臓、エラなど、骨以外が全て食べることが出来る魚である事から、古くから珍重されてきました。
「あんこう鍋」が代表的な料理ですが、ネギやもみじおろしなどを薬味に用いてそのままいただくだけで、どんな日本酒にも寄り添う万能な酒肴となる、お酒飲みにとって心強いつまみの1つではないでしょうか。
いかがでしたでしょうか?
誰もが好きな「あん肝」から、日本のその地でしかいただけない珍味まで、全国の珍味の中でも、お酒に合うものだけをご紹介してきました。
保存技術のなかった時代に少しでも食品を美味しく長く食べようとする先人の知恵がうかがえたり、その土地のお酒に合うよう考えて作られていたりと、珍味には、日本酒と同じように、作られた地と関わる歴史があります。
ぜひ、各地の美味しい日本酒とともに味わってみてくださいね。