
わかったつもりになってない?「火入れ」の工程をおさらいしよう!
2018/11/03
前回まで日本酒を語る上で欠かせない、「滓引き」や「濾過」といった工程について紹介しました。今回は「火入れ」について、ご紹介したいと思います。
日本酒製造工程における「火入れ」はご存知でしょうか。
日本酒の製造工程において、微生物の働きは切り離せません。しかし時にはそれら微生物が日本酒を一気にダメにしてしまうこともあります…。
前回までで「濾過」について理解いただけたかと思いますが、そろそろラストスパートです。今回は「火入れ」について解説していきます!
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火入れとは?
おり引きをした状態でも、まだ少量の酵素類が日本酒の中には残っています。よって「火入れ」と呼ばれる低温加熱殺菌を行います。60~65℃位で30分程加熱することで、酒内に残った酵素の働きを止め、悪性の乳酸菌の一種である火落ち菌を殺菌します。
火落ちって何?
火落ちとは、日本酒に「火落ち菌」と言われる特殊な乳酸菌が繁殖することをいいます。ほとんどの雑菌はアルコールに弱いため、平均的なアルコール度数が15%程度の日本酒では生活できません。
しかし火落ち菌は、アルコール耐性が非常に強く、日本酒の中で簡単に増殖する可能性のある特殊な乳酸菌です。この繁殖を防ぐために「火入れ」が行われるんです。
どうやって「火入れ」しているの?
現代的な方法
一般的に、火入れは蛇管(じゃがん)と呼ばれる熱交換器を使用して、温度を60℃から65℃位に保った管の中に酒を通し、急冷する加熱殺菌が一般的です。
しかし、この火入れの方法だと、火入れ後の原酒を貯蔵するためのタンクに存在する火落ち菌を殺菌することはできないので、100%安心というわけではないのです。よって、貯蔵は5℃以下の低温で行うこと、また瓶詰め時にも火入れを行う必要があるということになります。
高級酒向けの方法
大吟醸、純米吟醸以上のお酒になると、2回の火入れによる劣化は好ましくありません。
そこで、手作業でかなりの手間がかかりますが、お酒を瓶に入れ湯煎殺菌を行う「瓶燗火入れ」も近年積極的に取り入れる蔵元も増えてきました。これは酒の劣化を出来る限り防ぎ、酒本来の味わいを楽しめる利点があります。
生酒・生貯蔵酒・生詰酒の違いって何?
皆さんは「生酒」「生貯蔵酒」「生詰酒」という単語を聞いたことはありますか?実はこれらの単語を理解するだけで、飲まれている日本酒がいつ火入れを行ったかがわかるのです。
生酒
火入れを一切行わないものです。本生、生々とも言われます。これが本物の生です。
火入れを行わない「生酒」は、出来立てでフルーティーな味わいを楽しむことができます。ただ加熱処理(火入れ)を行ってないので大変デリケートとなっています。よって、生酒をお家で飲まれる際には保管に気をつけてくださいね。
生詰酒
酒蔵タンクに貯蔵される直前は火入れを行いますが、瓶詰めの直前には火入れしないものです。
生貯蔵酒
生のまま冷蔵貯蔵しておいて、出荷の瓶詰め直前に火入れするもので、貯蔵中が生なのでこの名がついています。
終わりに
ここまで大事に手間暇かけて製造してきた日本酒も、火落ちによって一瞬でダメになってしまうことも少なくないそうです。生酒はフルーティーでできたての味わいを楽しむことができますが、その分管理を徹底していかなければなりませんね!
次回は、原酒のアルコール度数を調整する工程、「加水」についてお話ししていきます!