
中興の祖「新右衛門」から続くこだわりの素材と酒造り【山形県・渡會本店】
2022/05/02
KURANDでは、お客さまにすてきなお酒と出会ってほしいから、日本酒をはじめとした、300種類以上のお酒を販売しています。
そしてそのお酒すべてが、日本全国の酒蔵とパートナー契約を結び、共同開発によって造られたお酒です。
今回はその中でも、日本酒「新右衛門」を造る山形県、渡會本店の代表取締役社長兼蔵元杜氏、渡會俊仁さんにお話を伺いました。―まずは酒蔵の歴史を教えてください。
江戸時代は徳川秀忠の時代、1615年~1624年の間に創業しました。創業から約400年続く、山形県で5番目に古い酒蔵です。
今回のお酒の名前にもなっている「新右衛門」は、渡會家の繁栄の礎を築いた中興の祖と呼ばれる人物です。私は新右衛門から数えて18代目にあたります。
―渡會本店さんのお酒造りの方針やこだわりを教えてください。
創業の頃から現在まで、生酛造り(きもとづくり)での酒造りにこだわっています。酒造りのとき、雑菌を抑えるために乳酸を使用します。
今では人工の乳酸を添加することが多いのですが、空気中にいる天然の乳酸菌を用いる方法を生酛造りと言います。江戸の初期から明治くらいまでは、一般的に用いられていた方法です。
もう1つのこだわりは、お米です。山形県は稲作が盛んで、日本で2番目に酒米の登録品種が多い県です。
昔から、お米の品種改良なども盛んに行われていました。そんな土地柄、私たちも、お米はとてもこだわって選んでいます。―渡會本店さんの挑戦や取り組みについて教えてください。
最近は、コロナの影響で非常にお酒の売れ行きが悪く、お酒に対する印象があまりよくない風潮にあることなどから、ノンアルコールの分野にも力を入れています。具体的には、甘酒です。
甘酒には、米麹で造るものと、酒粕から造るものの2種類があります。
酒粕を使う場合、アルコール分が8~9%ほど含まれていて、子供や妊婦さんなどは飲めない。しかし、アルコール分を飛ばすために煮沸してしまうと、風味や色味を損ねてしまいます。
そこで考えたのが、米麹と酒粕の甘酒をミックスするというものです。さらに、酒粕のアルコールを飛ばすときには、せいろの下から蒸気を吹き上げるという方法を用いています。
そうすることで、直接煮沸するよりも風味を損なうことなく、アルコール分を飛ばすことができます。
もう一つの取り組みは、化粧品です。これには、当社の生酛純米酒「庄内美人」を使用します。
生酛作りのお酒には一般的に通常のお酒よりアミノ酸が豊富に含まれており、保湿や抗酸化作用に優れているからです。
「庄内美人」から成分を抽出して、その成分で化粧水やスチームクリームなどの基礎化粧品を作っています。これは、私たちのお酒を化粧品のメーカーさんに提供して、作ってもらっています。―これから挑戦したいことや展望はありますか。
消毒用エタノールが品薄になった時に、私たちも特例として、高アルコールを取り扱うことのできる免許を取得して、醸造アルコールを蒸留して消毒用の高アルコールを造っていました。
しかし今では消毒用エタノールの在庫が潤沢にあるので、消毒用の高アルコールを造ることはなくなりました。
そこで今度は、同じ製法を活用して造った高アルコールの蒸留酒で、クラフトウォッカとクラフトジンを造ろうと思っています。
蒸留酒を白樺の炭でろ過するとウォッカに、蒸留酒にジュニパーベリーと呼ばれる杜松(ネズ)の実を入れるとジンになります。
日本の蒸留酒は注目されていることもあり、今後ぜひ造っていけたらいいなと考えています。
―渡會さんの経歴をお聞かせください。
私は、5人兄弟妹の長男です。
3人も弟がいたので誰かが蔵を継ぐだろうと思っていたのですが、新右衛門の代からずっと長男が継ぐという伝統や、祖母の想いなどもあり、36歳くらいから酒造りを始めました。
大学卒業後に、実は車のディーラーに勤めていたり、オーストラリアにワーキングホリデーで行ったりもしていました。
海外に住むのもいいなと思ったのですが、やはり長男ということもあって、蔵に入りました。―渡會さんが普段日本酒を楽しむときに用意する、とっておきのおつまみはありますか。
私自身、お酒は好きでよく飲みますが、おつまみにはチーズが一番です。日本酒は本当にチーズがよく合います。
どんなチーズでもほとんど合います。基本的に日本酒は、つまみを選ばないと思いますので、チーズはもちろん、いろんなおつまみと一緒に楽しんでもらいたいですね。
―では最後にこれを読んでいる方にメッセージをお願いします。
みんながそれぞれ違ったものを求める十人十色から、一人ひとりが新しいものを求め続ける一人十色の時代へ変わってきていると思います。
「新右衛門」は、今までに飲んだことのないような新しい体験をしていただける、そういったお酒に仕上がっているかと思いますので、楽しんでもらえたらいいなと思います。
(KURAND CLUB 2021年9月号 ニュースレターより抜粋)
渡會本店(山形県)
渡會本店は、東北6県で最大の面積を有する鶴岡市の西方、日本海まで直線距離で約3.5kmの大山地区に位置しています。
通年雇用、季節工を含めて全社員山形県生まれ、山形県育ち。フランスワインのブルゴーニュやボルドーに代表されるテロワールを地で行く創業400年の伝統蔵です。
「温故知新」と「不易流行」をキーワードに「現状維持は衰退への第一歩。」ということを肝に銘じ、伝統を重んじながらも日々進化していくことを念頭に、常に新しいことにチャレンジし続け、日本酒造りや、その他の商品作りに挑戦している革新蔵です。
渡會本店のお酒
「新右衛門」
山形県鶴岡市で老舗酒蔵が醸す、豊かなお米の旨味が溢れる上質な味わいの純米吟醸酒です。品のある心地よい香りとドライな飲み心地を、ぜひお食事とあわせてお楽しみください。