
食事と一緒に楽しむお酒を目指し基本に忠実な酒造り【長崎県・杵の川】
2022/05/03
KURANDでは、お客さまにすてきなお酒と出会ってほしいから、日本酒をはじめとした、300種類以上のお酒を販売しています。
そしてそのお酒すべてが、日本全国の酒蔵とパートナー契約を結び、共同開発によって造られたお酒です。
今回はその中でも、日本酒「のんのこうなぎ」を造る長崎県、杵の川の代表取締役、瀬頭信介さんにお話を伺いました。―まずは酒蔵の歴史を教えてください。
1839年(天保10年)、ちょうど幕末は坂本龍馬が生まれて少し経った頃に、丁子屋醸造として創業しました。
その後、昭和55年に長崎県内の4つの酒蔵が合併し杵の川が誕生しました。私は長崎県諫早市の黎明酒造の血筋で、黎明酒造としては5代目になります。―杵の川さんのお酒造りの方針やこだわりを教えてください。
食事をしながら飲むお酒を大前提としています。私たち自身も晩酌が好きなので、食事をしながら飲んで美味しいお酒として、自ら納得できる味わいを皆さまにお届けしたいという想いがあります。
また、私の祖父たちの時代である昭和30年代後半頃に、日本で最初の四季醸造を始めました。
1年中お酒を造りたいという想いで作った四季醸造の機械は、「黎明式発酵タンク」と呼ばれ、沖縄の酒蔵などでも使用されています。
―杵の川さんの挑戦や取り組みについて教えてください。
基本に忠実な酒造りを常に意識しながら、低アルコール日本酒や、オーガニック米での酒造りに取り組んでいます。
現在はさらに、長崎県五島に生息する「五島椿」から分離した酵母での酒造りに、日本で初めて挑戦しています。
「五島椿酵母」は、穏やかな果実の香りを感じる、なめらかな味わいに仕上がります。発酵力は強く、日本酒、焼酎、ワインの発酵酵母として使っています。
また、長崎はアジア圏との繋がりが深く、県のサポートもあることから、輸出にも力を入れています。現在は、中国や台湾を中心にアジア圏とカナダに輸出を行っています。
海外からの要望は増えてきており、チャンスを掴めるように英語表記のラベルや、オンラインの商談といった準備を日々行っています。―これから挑戦したいことや展望はありますか。
4社合併当初は規模が大きかったこともあり、大量生産のための設備を用いていましたが、それを今の適正な生産数量に併せて更新をしていきたいです。
それと同時に、より酒質を向上させていきたいとも思っています。
造りに関しては、新しい香りのタイプの日本酒に取り組んでいます。
「4MMP」という白ワインでよく検知されるような香り成分があるのですが、その成分を出す日本酒に挑戦しようと思っています。
―瀬頭さんの経歴をお聞かせください。
高校時代から寮生活で家を離れていたこともあり、酒造りをやるとは思っていませんでした。
子供の頃は、朝の3時とか4時に杜氏さんの出社するバイクの音が聞こえてきて、この仕事だけはしたくないなと思っていましたね。
大学を出てしばらく経ち、先代から声がかかったことを受け、広島の酒類総合研究所で2年間みっちり酒造りの勉強を始めました。
そこでは自分と同じような酒蔵後継者が全国から集まっていて、コミュニティや仲間を作ることができたのが、とてもよかったです。
今の経営、酒造りにおいても、困ったことがあれば、教え合い、助け合う存在です。―瀬頭さんが普段日本酒を楽しむときに用意する、とっておきのおつまみはありますか。
手間暇はかけずシンプルに。豆腐に天かすをかけて醤油をたらして食べたり、定番ですがキャベツと塩昆布とごま油を混ぜて食べたりします。
昔は酒屋さんの角打ちで、チーズを海苔で巻いたものをよく食べていました。どれもとてもシンプルですが、非常にお酒に合います。
あと、長崎県は水産加工品が美味しいですから、干したあご(トビウオ)もよくおつまみにしています。それ1本で2合、3合と飲めてしまいます。
―どうしてKURANDとお取引きすることになったんでしょうか。
私たちには関東圏のお客さまがあまりいなかったことや、先進的に取り組みを進めているのを拝見して、お取引きすることを決めました。―実際にお取引きしてみていかがですか?
「のんのこうなぎ」に関しては、既存のデザインやコンセプトからガラッと変わったテイストのお酒を、地域や蔵の特性を活かしながら造っていただき、ご縁に感謝しております。
―では最後にこれを読んでいる方にメッセージをお願いします。
長崎県諫早市は日本酒のイメージがほとんどない街だと思いますが、福岡国税局の鑑評会で平成29年と令和元年に2度、第1位を頂戴した酒蔵です。
地方にもそういった酒蔵があることをぜひ知っていただけたらと思います。
また、ラベルや味わいから、異国情緒溢れる長崎らしい雰囲気を汲み取っていただき、いずれこの状況が落ち着きましたら、長崎で地元の食材と地元のお酒を飲むといった体験をしてもらえたらと思います。
ぜひ美味しく楽しんでいただければ嬉しいです。
(KURAND CLUB 2021年8月号 ニュースレターより抜粋)
杵の川(長崎県)
杵の川は、天保10年(1839年)に長崎県東彼杵町で丁子屋醸造として創業した酒蔵です。
昭和55年に、長崎県内の丁子屋醸造、黎明酒造、雲仙酒造、佐賀県の呉竹酒造の4つの蔵が合併したことにより杵の川が誕生しました。
長崎県産の米と地元に流れる多良山系の伏流水を原料に使用し、厳格な温度管理ができる低温醗酵タンクで、ゆっくりと大切にお酒を育てています。
杵の川に関係する、すべての方の人生を豊かにするような食中酒を造るべく、地元に根差した酒造りを目指しています。
杵の川のお酒
「のんのこうなぎ」
果実のようにジューシーな香りが広がる純米吟醸酒です。諫早名物「楽焼うなぎ」の濃い味付けのタレともよく合う濃醇甘口の味わいは、冷や、お燗など様々な温度帯でお楽しみいただけます。