料理とお酒、香りと音楽。異なるものを組み合わせることで、互いの魅力が引き立つ「ペアリング」。
そんな中で、今注目したいのが“本とお酒”のペアリングです。 読む本によって、飲みたいお酒が変わる。飲むお酒によって、物語の感じ方も変わる。 そんな風に、本とお酒のペアリングは、ひとつの物語に新たな表情をもたらしてくれます。
さまざまな本を世に送り出す出版社「ポプラ社」さん。その中でも大人向けの本の編集部が運営するオウンドメディア「ポプラ社一般書通信」さんご協力のもと、クランドの本好きスタッフ8名がお酒と本のペアリングについて考えてみました。
実験ルール
①ポプラ社さん選定の3冊の中から、スタッフがそれぞれ1冊をチョイス。
②選んだ本ごとに3つのグループに分かれて、まずはイメージでお酒を選定。
③メンバー間で議論をして、気になるお酒を飲み比べ。
読書の時間が、もっと豊かに、もっと深くなる。そんな「本とお酒」のマリアージュの世界をご紹介していきます。
1冊目:心温まるヒューマン小説
「花屋さんが言うことには」著/山本 幸久

書籍の内容
24歳、ブラック企業勤務。身も心も疲れ果てていた紀久子が深夜のファミレスで出会ったのは、外島李多と名乗る女性だった。彼女は「川原崎花店」という花屋さんを駅前で営んでいるらしく、酔っぱらった勢いで働くことに。
やたらカレー作りがうまい青年や、おしゃべり好きの元教師、全体的に適当な李多。バラエティに富んだ従業員と色とりどりのお花に囲まれながら、徐々に花屋さんの仕事に慣れていく。 花を求めるお客さんの事情はそれぞれ。誰かを祝う花もあれば、少し切ない花もある。いろんな想いが詰まったお花を届けているうちに、紀久子は自分の心にもう一度向き合いはじめ――
ポプラ社ホームページより
選定社員
ぐし:Webマガジン編集部員。お酒の情報をさまざまな形で展開中。
さら:クランドの撮影担当。商品や読み物などの撮影を行っています。
きっぽ:カスタマーサポート担当。クランドにくるお問い合わせに日々対応。
ぐし:この本は、花屋さんが舞台で、各話でさまざまな花がテーマで描かれているんですよね。そういう意味では、花をモチーフにしたお酒を選びたくなるのですが……皆さんどんなお酒を思い付きましたか?
さら:私は「梅酒」でした。「梅」という植物を用いたお酒のジャンルとも言えますし、「飲める花のお酒」としてどうかなと。
ぐし:なるほど!ジャンル自体を「花」ととらえるの面白いですね!
さら:今回は比較的王道な梅酒として「蜜梅」、選んでみました。
きっぽ:小さなサイズから通常の720mlサイズまで展開があるので、そんなに飲めないっていう人でも手に取りやすいのもいいですよね。
さら:味わいも「ザ・梅酒」って感じで。わかりやすい梅酒で、人も問わないかなと!
きっぽ:私は「ローズクォーツ」もいいかなと!このお酒は宝石を題材にした商品なんですけど、花に花言葉があるように石にも「石言葉」があるんですよね。それで、少しつながりを感じました。
ぐし:わ~!めちゃくちゃバラの香りがしますね!そして甘い!
さら:この本自体がオムニバス形式なので、1日1話ずつじっくり読んでいく人にはこのくらいの甘さがちょうどいいかも。
きっぽ:個人的にはこの本、現実に向き合う場面もちらほらあるので、ちょっぴりほろ苦さがあってもいいかもしれないと思いました!
きっぽ:あ、あと梅酒みたいに果実も植物の1種ととらえて……「SASEBOTANICAL」もよさそうです!
きっぽ:ベースのジンのボタニカルとして温州(うんしゅう)みかんにいちご、梅の枝などの、いろいろな植物が入っているんですよね。
ぐし:いい~!見た目華やかで、シリーズにいろいろな商品があるのも魅力ですね
きっぽ:これは、絶対に炭酸割りですね! 甘さもあるけど、複雑な甘さな感じがまた魅力。
さら:苺も効いていて、甘酸っぱい印象なのもいいですね。
きっぽ:私にとっては、夜1日疲れた時に読んで「ホッ」と一息つく時に読みたい、そんな本でした。そう考えると、私はじっくりと炭酸割りで「SASEBOTANICAL 苺」を飲むのが一番イメージできます。
さら:私は天気がいい日にまとめて読みたい派です!それで華やかな「蜜梅」がぴったりだなと。
ぐし:なるほど!読むシーンで飲みたいお酒が変わるって面白いですね!
2冊目:日本語について考えるエッセイ
「日本語界隈」著/川添 愛 · 著/ふかわ りょう

書籍の内容
ちょっとした日本語の言い回しでモヤモヤしているふかわさんと気鋭の言語学者・川添愛さんが、「言語学」という枠を超えて、日本語のユニークさと奥深さを楽しむ、異色の対談集。身近なのに意外とややこしい!?繊細かつ頑固な「日本語」の素顔に迫る!
ポプラ社ホームページより
選定社員
すず:マガジン編集部員。Webから冊子まで関わっています。
よしこ:カスタマーサクセス担当。メールマガジンやLINEなどを配信。
フーミン:デザイナー。オンラインサイト上のさまざまなデザイン物を担当。
すず:この本では、ふかわさんと川添さんというお2人が楽しく日本酒の魅力を語ってくれているんですけど……ついついこの2人に「それ面白いね」って言ってほしい!みたいなところも気にしながら商品を選びたくなってしまいました。
よしこ:わかる!ふかわさんと川添さんがラベルを見た時にどういう風に思うか、みたいなところも気にしながら商品を選んじゃいました!じゃあ私、早速なんですけど、「あなたの蕎麦に」めっちゃ良くないですか?「(あなたの)側に」と「蕎麦に(合わせて)」の掛け合わせが、ネーミングが詩的で素敵で!
すず:「あなたは」をひらがなにしているのもいいですよね。
フーミン:作中で唯一具体的なお酒で出てきたのが、「焼酎」なんですよね。これはね、絶対にお湯割りがおすすめ。
フーミン:めっちゃいい香りする!
よしこ:もう一生飲んでたい……これこそ語らうにはぴったりじゃないですか。それこそ「あなたのそばに」って、持っていく相手がいるはずですよね。あと普段「あなたのそばにいます」とか改めて言わないじゃないですか。そういう消えつつある美しい日本語を伝えるためのお酒なのかな……とか、この本を読んだ後だと、いろいろ思いふけっちゃいますね。
よしこ:この本の内容が、めちゃくちゃ夜にゆっくりしっぽりと飲みながら読みたい感じなんですよね……。そこでシーンをイメージして、「真夜中のカフェオレ」もいいなって思いました!
すず:実はラベルにも本が入っているんですよね。なのでこのお酒は夜更かししながら、本を読むことを想定されているんじゃないかと思っています!(笑)
よしこ:ミルクで割って、氷を1、2個……あ、いい香り。ちょっと甘いのもまたいい……。
フーミン:もうこれ絶対「夜更かし用」だよね。あとはベタだけど、商品名にストーリーを込めた「酒米の王様に恋した僕の物語を知ったら、君は何を想うだろうか。」はどうかな?
よしこ:うわあ、すごく上品な香り。余韻もきれいで、美味しい~
フーミン:これは読みながら飲んじゃうと、お酒進んじゃうね(笑)。
よしこ:アテが欲しい。ホタルイカ……
フーミン:あとおでんとか。
よしこ:日本語界隈をインプットした後に、このラベルのストーリーについて語るのもいいかもしれないですよ。
すず:この本を読んだら、ラベルを読むのがちょっと楽しくなりますね。「何を思うんだろう」って、あえて言い切らずにこの言葉で止めてるところに日本語の魅力を感じるとか……。
よしこ:この「か」があるとないで変わるかもしれない!思うんだろうかって言ったら、その人に対して思いをすごい馳せてる感じはするかもしれない。
よしこ:日本語って誰かと会話するところで、「あ、この表現いいな」って思ったり、「次この表現使いたい」って思うじゃないですか。だから日本語を高める時に相手って絶対必要だなと思ったんですよね。その対象が人であれ本であれ。
すず:面白いですね!日本語界隈しています!
よしこ:と思った時に、やっぱり「このあなたの蕎麦に」はその一緒に飲んでいる相手ともの日本語のやり取りの中にも考えられる要素がいっぱいありそうだなって。
すず:タイトルにある「界隈」って言葉もコミュニティ的な意味合いですもんね。ひとりではなくみんなで日本語について考えてみようっていうカジュアルな感じで、軽く読めちゃう本でした!
3冊目:背筋も凍るホラー小説
「口に関するアンケート」著/背筋

書籍の内容
著者:背筋(せすじ) 「近畿地方のある場所について」(KADOKAWA)で2023年にデビュー。同作が「このホラーがすごい! 2024年版」にて1位に。近著に「穢れた聖地巡礼について」 (KADOKAWA)など。
ポプラ社ホームページより
選定社員
ぜにもも:SNSマーケティング担当。最近は社用Xアカウントの運用もスタート。![]()
ぽめ:商品企画担当。商品のラベルやコンセプトなどを考えている。
きっぽ:カスタマーサポート担当。クランドにくるお問い合わせに日々対応。
ぜにもも:今をときめく作家さんの話題のホラー小説!ということで……コンパクトな本であらすじも公開されていないような本なので、なんとかネタバレをしないように進めていければと思いますが……。
きっぽ:作者の背筋さんが出してる本がやっぱドロドロ系の、最後味の悪さというか、本を飛び越えて読み手である私たちのいる「こっちの世界」にまでちょっと影響を及ぼしそうな感じの本を書いてる人なので……。私は味が濃いお酒が飲みたくなったなあ。
ぜにもも:味が濃いというと……。
きっぽ:甘いんですけど、しつこすぎない甘さ。「罪 魅惑イチゴ」とか……?
ぜにもも:ドロドロよりは少し控えめの甘さの方が合いますかね?
きっぽ:そうですね……ちょっと甘すぎるとしんどくなりそうかも(笑)。
ぜにもも:「嫉妬」とかどうですか?
きっぽ:嫉妬いいですね(笑)。
ぽめ:嫉妬のラベルってグラスにも、2人の人物が会話をしているようにも見えるっていう仕掛けがついているんです。「口」がテーマのこの本にもぴったりそう!
ぽめ:味も甘すぎない。そしてラベンダーの香りがいい感じ……。
ぜにもも:あとは逆にちょっとすってさせたいみたいな気持ちも……。ワインとか飲みながらあえて他人事としてみるのもいいかなとも思いました。
ぽめ:赤ワインですよね!「Chateau Usagi」とかどうですか?
きっぽ:いいですね、赤ワイン!あまり渋すぎなくて、飲みやすい。
ぽめ:軽やかなので、物語の重さもさらっと受け流せそうです。
きっぽ:逆に重たいボディのワインだと、物語にお酒が飲まれないっていうのもあるかも。いろいろな赤ワインを合わせてみたくなりますね!
ぜにもも:もうひとつ私が気になっていたのだと、木樽熟成の「桜の木樽で熟成した麦焼酎」です。
ぽめ:「木」が冒頭から話のキーになりますもんね。
ぽめ:木の香りが最初に来るんですよね。ああ、甘くて美味しい……。
きっぽ:「口に関するアンケート」だから、口に含んだ瞬間に広がる香りっていうのは魅力かもですね。 読み進めて、すこしずつ真実がわかっていくように、焼酎の味わいも次第にわかっていく……。
ぜにもも:たしかに、深い!これは飲みながら読み進めたくなってしまいました!
おわりに
今回、3冊の本を題材に、それぞれにぴったりなお酒をペアリングしてみました。本を読む時間帯や気分によっても「飲みたいお酒」は変わるという発見もあって面白かったです。
ぜひ、グラスを片手に本を開いてみてください。 物語の余韻とともに、いつもの1本のちょっと違った一面が見つかるかもしれません。
ちなみに、ポプラ社さんの方でもクランドのお酒を使って、実験をしてくれたようです。その様子はこちらから……。