少しずつ日が延びて、夕暮れの空が柔らかな薄紫色に染まる季節になりましたね。
商品開発担当のしみずです。
ウイスキーの熟成が生み出す「バニラのような甘い香り」。
愛好家たちが尊ぶその芳香を、もし世界最高峰の天然素材で極限まで引き出すことができたら……。
その想いが、このプロジェクト「Vanilla Amber」の始まりでした。
樽の奥の甘い香りに惹かれて
ウイスキーをゆっくりと口に含んだとき、ふわりと鼻を抜けるバニラのような香り。
樽の中で長い時間をかけて眠ることで生まれる、あの奥深い甘やかさが、私はとても好きでした。
ある時、ふと思ったのです。
「バニラそのものの甘い香りをまとったウイスキーがあれば、どんなに幸せだろう」と。
そして、一つの大胆なアイデアが浮かびました。
「いっそ、本物のバニラビーンズをそのまま漬け込んでしまえばいいのでは」
無謀とも思えるその思いつきを「神息酒造」に打ち明けた日のことを、今でも鮮明に覚えています。
呆れられるかもしれないと少し緊張していた私に、社長は「面白いですね」と、食い気味に笑顔で応えてくださいました。
そこから、私たちの未知なる挑戦が始まったのです。
不安を越えて見つけた、美しい調和
試作は、手探りの連続でした。
世界最高峰と言われるマダガスカル産のバニラビーンズ。
その芳醇な香りを活かそうと、様々な原酒の組み合わせを試してみたものの、最初はなかなか思い描いた味にたどり着けませんでした。
ウイスキーの主張が強すぎてバニラが隠れてしまったり、逆に香りが浮いてしまって不自然になったり。
「主役であるバニラのシルキーな甘さを、どうすれば一番心地よくグラスの中に咲かせることができるだろう」
何度もブレンドを試し、迷い、またグラスを傾ける。
余計な香りがバニラの個性を邪魔しないよう、熟成にはあえてシンプルなアメリカンオーク樽を。
そこに、モルト原酒とグレーン原酒を1%単位で細やかに重ね合わせ、独自の比率を探り当てていく。
そうしてようやく、ウイスキーの深いコクとバニラの甘美なトーンを、ひとつに美しく同調させることができたのです。
毎日少しずつ、自分好みの香りへ
このウイスキーは、私たちが完成させてお届けするわけではありません。
バニラとウイスキーをボトリングするのは酒蔵から発送する直前。
皆様のお手元に届いた後も、自宅での「追熟」が体験できます。
なぜ、あえてそんな手のかかるスタイルにしたのか。
それは、ウイスキーが「嗜好品」だからです。
どんな香りが心地よいと感じるかは、人それぞれ違います。
「今日は昨日よりも、ほんの少し甘みが増したかな」
ボトルの中でゆっくりとバニラの成分が溶け出し、日ごとに芳醇さを増していく。
その過程を確かめながら、ご自身の正解を探す時間そのものを、ひとつの体験として楽しんでいただきたかったのです。
終わらない物語と、ささやかな余白
そして、このお酒には、もう一つの楽しみ方があります。
中身を飲み終えた後、ウイスキーの旨みをたっぷり吸い込んだバニラビーンズは、もう一度使うことができるのです。
試作中、二度目の漬け込みでもしっかりと甘い香りが漂ってきたときは、胸が高鳴りました。
もし香りが出にくい時は、ナイフで縦半分に割いてみてください。
グラスに注ぐ際、小さな黒い粒がお酒の中に入ってしまうことがありますが、それは本物のバニラビーンズ。
そのまま飲んでしまっても全く問題ありませんので、安心してくださいね。
私のおすすめは、二度目のバニラを芋焼酎に沈めてみること。
素朴な芋の甘みとバニラの甘美な香りが、不思議なほどよく馴染むのです。
明日もまた、ボトルの中のバニラは少しだけウイスキーと深く混ざり合い、新しい香りを紡いでいるはずです。
慌ただしい日々のなかで、その静かな変化を待つ時間が、あなたの心を優しくほぐす「ささやかな余白」となりますように。
それでは、今夜もよい時間を。
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