山形県・高畠町にある「後藤酒造店」の皆さんと手を取り合ってから、季節がひとつ巡りました。
商品開発担当のみてらです。
雪深く、吐く息が白く染まっていたあの冬の日から数ヶ月。
雪解け水が小川をサラサラと流れる心地よい音を思い出しながら、今日は少し、私の個人的な備忘録にお付き合いいただければと思います。
静寂な空間が教えてくれた、確かな信頼
初めてその蔵に足を踏み入れた日のことを、今でも鮮明に覚えています。
ひんやりとした空気の中に、ふわりと漂う酵母の甘い香り。
そして何より私の視線を釘付けにしたのは、隅々まで丁寧に掃除された空間と、規則正しく整頓された道具たちでした。
道具の扱い方には、そこにいる人々の仕事への姿勢が静かに、けれど雄弁に表れます。
磨き上げられた床に立ったとき、「ここのお酒は絶対に信頼できる」と、理屈ではなく肌で感じました。
実際に、長年愛され続けてきた伝統の銘柄を口に含むと、その直感が確信に変わります。
舌の上に広がるのは、どこまでも誠実で、造り手の温もりが伝わってくるような優しい味わい。
あの整然とした美しい蔵を見た後だからこそ、その味の奥にある深い理由に触れられた気がしました。
ふたつの道を、ひとつの未来へ紡ぐ
数百年の歴史を持つ伝統のブランドと、私たちがつくり出す新しい商品。
その二つを同じ場所で育てていくというビジョンを共有することは、決して簡単なことではありませんでした。
「どちらかを優先するのではなく、両方の価値を高めていきたい」
その想いが誤解なく伝わるだろうか。
新しい風を入れることで、彼らが大切にしてきたものを傷つけてしまわないだろうか。
言葉を交わすたび、「なぜこれをやるのか」という背景を、ひとつひとつ丁寧に紐解くように語り合いました。
そんな私の小さな緊張を解きほぐしてくれたのは、社長の朗らかな笑顔と、その姿勢でした。
壁を作らず、初めから「一緒に同じ方向を向いて成長していこう」と背中を押してくれたこと。
その温かい距離感があったからこそ、私たちは今も迷うことなく、隣を歩き続けることができています。
変わらないものを守りながら、変わっていく
「これから、どんなことができるか楽しみですね」
お話し合いを重ねる中で、蔵人や営業の皆さんから、そんな率直な期待の言葉をかけていただけたことが、何よりも嬉しくて胸が熱くなりました。
どんなに新しい挑戦を重ねても、決して変えたくないものがあります。
それは、あの整理整頓された蔵に根付く「真面目にお酒と向き合う姿勢」と、地域に愛されてきた伝統の味です。
「高畠」という豊かな土地の恩恵と、職人たちが紡いできた確かな技術。
それらを最大限に活かしながら、10年後、この町全体がひとつの産地として活気に満ち溢れるような未来を描いています。
明日からもまた、誠実に、そして丁寧に向き合っていこう。
グラスの向こう側に広がる新しい季節が、今はただ、とても楽しみです。