商品開発担当のしみずです。
お気に入りの映画を流すか、それとも、読みかけの小説のページをめくるか。
そんな、何気ない夜の静寂には、時間をかけてゆっくりと味わえる「相棒」が欲しくなります。
たとえば、長い眠りから覚めたばかりの、透き通るような琥珀色のしずく。
宮崎の地で生まれた、とある1つの樽「Cask #1046」の物語をお話しさせてください。
眠りから覚めた、特別な原酒
「今年の3月で、ついに完成の時を迎える原酒があるんです」
酒蔵からその提案をもらったとき、私は純粋に「これはお客様に喜んでいただける企画になる」と心が動きました。
ジャパニーズウイスキーと名乗るためには、厳格な基準があります。
その中でも熟成期間は、造り手にとって大きな壁であり、同時にウイスキーの醍醐味でもあります。
手元にある原酒がどんな色に染まり、どんな香りを纏うのか。蓋を開けるその日まで、じっと待つしかありません。
市場に出回るウイスキーの多くは、味を均一にするために複数の樽をブレンドします。
けれど、今回はあえて、その樽が持つありのままの個性を味わう「シングルカスク」にこだわりました。
500本しか存在しない、この樽だけの味わい。そのオーナーになるという特別な体験を、お届けしたいと思ったのです。
真似ではない、日本ならではの在り方
このウイスキーを手掛けた宮崎県の「佐藤焼酎製造場」は、100年以上の歴史を持つ酒蔵です。
ウイスキー造りを始めるにあたり、今の日本の主流は本場スコットランドの設備を導入することです。
しかし、彼らはアメリカの取引先から投げかけられた一言で、その方針を考え直しました。
「なぜ、スコッチの真似をするんだ。日本には独自の素晴らしい蒸留技術があるじゃないか」
その問いかけが、「日本のウイスキーとは何か」を見つめ直す原点になりました。
彼らが選んだのは、長年使い慣れた焼酎用の単式蒸留器です。
それを自らの手でカスタマイズし、蒸気の冷却タイミングを緻密に調整。
さらに、麦汁の仕込みには、職人がつきっきりで温度を見守る「BIAB(ブリュー・イン・ア・バッグ)製法」という、手間のかかるやり方を取り入れました。
その緻密な手作業が、雑味を排した、クリアな原酒を導き出したのです。
宮崎の風と、柔らかな水の記憶
グラスに注ぐと、明るいオレンジを帯びたアンバーカラーが、春の夜の灯りをキラキラと反射します。
一口含んで驚くのは、その舌触りです。
清流・五ヶ瀬川の支流である祝子川(ほうりがわ)の水を仕込み水に使っているのですが、この水は国内トップクラスの「超軟水」。
そのおかげで、驚くほど角が取れ、シルクのように滑らかで優しい口当たりに仕上がっています。
そして鼻を抜ける、濃厚なバニラと、どこか高貴なチョコレートのような香り。
これは、あえて「新樽」を選んだからこそ生まれた個性です。
真新しいアメリカンホワイトオークの樽が、宮崎の温暖な気候のもとで呼吸を繰り返し、木材本来の生命力を原酒にたっぷりと溶け込ませてくれました。
その土地の風土と、酒蔵の誇りが、グラスの中で1つの風景となって広がっていきます。
グラスの中で解ける、あたたかな夜
ストレートで、香りの広がりをじっくりと堪能するのも良いものです。
あるいは、グラスに氷を1つ落とし、カランという涼しげな音を立てながら、氷が溶けるにつれて変化していく表情を楽しむのも素敵ですね。
傍らには、ビターチョコレートや、香ばしくローストされたアーモンドを添えて。
カカオのほろ苦さが、ウイスキーのキャラメルのような甘みを優しく引き立て、ついまたグラスへ手を伸ばしてしまいます。
誰かと語り合う夜。
映画の余韻に浸る夜。
ただ静かに、自分と向き合う夜。
「Cask #1046」は、そんなあなたの時間に寄り添うために生まれてきました。
ただのウイスキーではなく、樽の成長を共に見守る「オーナー」になるという贅沢。
明日がまた少しだけ楽しみになるような、そんな豊かな夜をお届けできれば嬉しいです。