約30年前に石川県で開発され、世に出ることなく眠り続けた幻の酒米「石川酒30号」。2019年、その酒米で酒を造る同プロジェクトが、KURANDと石川県内の1酒蔵と1農家との間でスタートしました。
石川県農林総合研究センターの種子保管庫に残されていたわずか100粒の種子から、見事な穂を実らせ、商品化までたどり着いた奇跡の純米大吟醸酒「幻醸」。完成までの3年に及ぶ道のりには、多くの苦労や造り手の熱い想いがありました。
この度、「幻醸」が発売した2022年7月に取材した製作秘話を再掲載。プロジェクトを成功へと導いた石川県の酒蔵・数馬酒造の数馬 嘉一郎さん(以下、数馬さん)と、農家・ゆめうららの裏 貴大さん(同、裏さん)の出会いから石川県への思いが描かれています。
奇跡のストーリーを読めば、きっとお酒の味わいもより深まるはず――。
故郷へ貢献したいという思いでつながった二人
―まず初めに、お二人が交流するようになったきっかけを教えてください。数馬さん:同級生で、裏さんが起業のタイミングで会いに来てくれたんです。
裏さん:食用米は年々需要が下がってきていて、食べる以外のお米を考えたときに、酒米が思い浮かんだんです。それで「日本酒 能登」で検索したら、世界一若い酒蔵の社長としてトップに数馬さんが出てきたと記憶しています(笑)。

裏さん:僕は学生の頃、数馬さんに対して屈託のない、明るいイメージを持っていたので、ラフな感じで連絡したんですけど、いざ酒蔵についたら、門構えがあまりにも立派で……。起業して1~2年目の自分がいきなり「酒米をつくらせてくれ」とは言えなかったです(笑)。
数馬さん:僕は久しぶりに同級生に会えたと思って、フレンドリーなスタンスでいたつもりだったんですけど(笑)。
裏さん:その時に、数馬さんに言われて衝撃的だったのが「これから能登をどうしていきたい?」って一言で。僕は当時、「自分が農業界にイノベーションを起こしてやる」という自分中心のマインドだったので、これは違うなと。改めて、農業者として能登を見つめ直したときに耕作放棄地があるという話になって、そこを開墾して酒米を作っていこうという話にまとまりました。
品種のリブランディングで農業界を変えたい
―それでは改めて、今回の取り組みが始まった経緯を教えてください。数馬さん:もともとお互い能登産の原材料にこだわりはもっていたんです。そこにKURANDさんから「品種開発したい」という話を受けて、裏さんに相談したんです。

石川県で育てやすい品種と実感
―実際に「石川酒30号」を育ててみて、苦労した点などがあれば教えてください。裏さん:扱いやすかったです。石川県の土地に合っているのか、うちで作る五百万石よりも10a*当たりで収穫できる量が多いし、粒も大きかったんです。五百万石は新潟のお米なので、やっぱり(石川酒30号は)石川県の土地に適したお米なんだなと。
*a…アール。土地の計量に使用する単位。1a=100㎡。

裏さん:それと今後、石川県にどのように貢献ができるかと考えたときに、石川県で開発したお米でお酒を醸していくことができるというのは、次のフェーズに移ったということだなと実感しましたね。
数馬さん:そうなんですよね。弊社も2020年に能登産100%を実現することができたので、次は県内で開発された原材料の比率を高めたいと考えていました。
さまざまな奇跡が詰まったお酒
―今後、プロジェクトでどのようなことをしていきたいですか?数馬さん:まだまだこの新しいお米を楽しみたいので、まずはお米の特徴と味わいを自分の中でリンクさせたいと思っています。

―最後に、購入されたお客さまにどのようにお酒を飲んでいただきたいでしょうか?
数馬さん:ぜひこのお酒のストーリーや取り組みについてなど背景を知った上で飲んでいただきたいですね。大切な方と一緒に良い会話を生み出すきっかけとなるお酒になればと思っています。
裏さん:このお酒自体が、僕らにとって奇跡みたいなものなんです。石川酒30号が開発されたのが、昭和61年なんですけど、僕らの生まれ年と偶然一緒なんです。ぜひそういった自分にとって奇跡って何だろうと考えたり、お酒自体のストーリーと重ねながら飲んでいただけると嬉しいです。
ストーリーに思いを馳せて飲んでほしい

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