商品開発を担当している、しみずです。
皆さんは「甘夏」と聞いて、どんな情景を思い浮かべるでしょうか。
昔はよく食卓に並んでいた気がするけれど、最近は少し縁遠くなってしまった。
そんな方も、少なくないかもしれません。私自身もそうでした。
でも、ふと口にしたときの、キュッと胸を締め付けるような酸味と、その奥に潜むほんのりとした苦味。
それはなんだか、大人になった今の自分にこそ、静かに寄り添ってくれるような気がして。
「あの甘酸っぱさを、もっと素直に、ピュアなまま味わえるお酒が作れないだろうか」
過去に手がけたフルーツワインの反響に背中を押され、そんなささやかな願いから、私たちの手探りの日々が始まりました。
海風に吹かれながら、ゆっくりと甘さを蓄えて
主役となる果実を探して辿り着いたのは、博多湾にぽっかりと浮かぶ能古島(のこのしま)でした。
潮風が優しく吹き抜ける、日当たりの良い斜面。
そこで出会った甘夏は、少し変わった育て方をされていました。
一般的な甘夏は冬の間に収穫し、倉庫で熟成させて酸味を抜きます。
けれど、この島では4月になるまで、木にならせたまま完熟の時を待つのです。
「樹成り(きなり)」と呼ばれるその果実は、太陽の光をたっぷりと浴びて、最大で半年も長く木の上で過ごします。
ゆっくり、ゆっくりと春を待ちわびた果実は、酸味の角が取れ、とろけるような深い甘さをその実に蓄えていました。
贅沢に絞った、果実のピュアな素顔
そんな特別な果実なのだから、お酒にする時だって誠実に向き合いたい。
だからこそ、農家から受け取った甘夏は、加工業者を通さず、老舗ワイナリーの職人たちの手で一つひとつ丁寧に搾汁されています。
果汁をたくさん搾ろうと強い力をかければ、皮のえぐみや雑味まで出てしまいます。
けれど、私たちが届けたかったのは、澄み切ったピュアな美味しさ。
だからこそ、時には一部を手絞りし、余計な圧力をかけない「贅沢取り」を徹底しました。
役目を終えた果皮は、ワイン用のぶどう畑に還り、また次の命を育む土の一部となる。
そんなサステナブルな物語も、このお酒の背景には隠れています。
食卓にそよぐ、新しい季節の気配
完成した「甘夏すぎるワイン」は、甘夏の果汁だけを発酵させたワインに、さらにフレッシュな果汁を足して仕上げた1本です。
よく冷やしたワイングラスに注ぎ、そっとグラスを揺らすと、爽やかな初夏の香りがふわりと鼻をくすぐります。
ひとくち含むと、ハツラツとした酸味が舌を軽やかに叩き、後から完熟果実のジューシーな甘みと、あの懐かしい苦味が追いかけてきます。
やや甘口でありながらも、食事に寄り添ってくれるのは、甘夏ならではの潔いサッパリ感があるから。
たとえば、アサリを白ワインで蒸したひと皿や、オリーブオイルを回しかけた白身魚のカルパッチョ。
海の気配を感じるお料理と合わせれば、まるで海辺のテラスで食事をしているような、心地よい風が食卓に吹き込みます。
今回、この「甘夏すぎるワイン」を、クラウドファンディングという少し特別な形でお届けすることにしたのには、理由があります。
それは、1年のうちでほんのひと時しか訪れない、甘夏が最高に熟れる瞬間を、そのまま味わっていただきたかったから。
木の上でじっくりと春を待った完熟果実の、搾りたてのみずみずしさ。出来立てならではの、パッと花が開くような香り。
それらを一番美味しい状態のまま、皆さまの食卓へまっすぐにお届けするには、期間限定のプロジェクトという道が最もふさわしいと感じたのです。
柚子やグレープフルーツがお好きな方なら、きっとこの新しい出会いを楽しんでいただけるはず。
少しずつ夏へと向かうこれからの季節、よく冷やしたこの一杯が、心地よい時間のお供になれば嬉しいです。