クランドでは、桃の香りを纏う「PEACH GIN 百彩 -momoiro-」やマスカットの香りを纏う「MUSCAT GIN 蒼彩 -aoiro-」など、果実や花の香りをまとった季節限定のクラフトジンをいくつも展開してきました。その系譜で昨年誕生し、大好評を得たのが金木犀の香りを纏った「金木犀GIN -MATOU-」です。
手作業で摘み取った生の金木犀をふんだんに使用し、香りを纏うように仕上げた1本。生花を手作業で使用するため大量生産が難しい中、昨年の反響も受けて今年咲いた金木犀を使用して、数量限定の抽選販売という形でお届けします。花びらの調達から蒸留の温度管理まで、幾重にも重なる試行錯誤の末にたどり着いた香りの秘密を紐解きます。
金木犀の香りをがっつりと感じられる
1本を目指して
今回の製造を担うのは、京都府にあるジン専門の蒸留所「SiCX京都蒸留所」。前述した「PEACH GIN 百彩 -momoiro-」や「MUSCAT GIN 蒼彩 -aoiro-」を手掛けてきた実績を持ちます。香料や着色料、保存料を使わず、砂糖も加えない「無添加」にこだわり、天然のボタニカルだけで香りと味わいを組み立てる、健康に優しいお酒づくりを追求している蒸留所です。
「百彩や蒼彩と同じように、金木犀の香りをがっつりと感じられる1本に仕上げたい」。KURAND商品開発チームの青戸元さんのそんなオファーとともに、SiCX京都蒸留所との挑戦が始まりました。
今年咲いた生の金木犀を
一つひとつ手摘みで収穫
開発当時、最も苦労したのは「生の金木犀の確保」でした。金木犀の発売時期を旬に合わせようとすると、実際に花が咲いてから動き出したのでは遅くなります。そのためシーズンに入る前から生の金木犀を探し始め、昨年は京都を中心に兵庫・山梨の3地域や契約農家を通じたルートなど、あらゆるルートを駆使し、仕入れた生の金木犀を使用しました。
収穫作業もまた、想像以上に地道なものになります。金木犀の花は非常に小さく、手袋をつけた手作業でひとつひとつ摘み取っていくしかありません。しっかりと金木犀の香りを出すためには、巨大なタンクを埋めつくすほどの膨大な量の花が必要となります。
酒蔵が自ら収穫にも赴きながら、枝を折らずに花だけを丁寧に摘み取るよう配慮し、一つひとつ丁寧に摘み取ります。SiCX京都蒸留所代表取締役社長の前田亮さんは、「あまりの量に、製造時の蒸留所は全体が金木犀の香りに包まれていました」と、当時を振り返ります。今年も契約農家さんからルートを確保し、金木犀の生の花を用意して、製造に挑みます。
ちなみにこだわりは「花だけでなく、ごく少量の葉も使用していること」。前田さんは「葉に含まれる油分をわずかに加えることで、味わいにボディ感と奥行きが生まれるんです。ただし量を誤ると青臭さがノイズとなって出てしまうため、使用量は慎重に見極めました」と話します。
厳選した9種類のボタニカルで、
金木犀の香りに強さと奥行きを
ジンの味わいや香りを決める大きな役割を担うのが、ボタニカルの選定です。前田さんはボタニカルを選ぶ際、「シトラス」「ハーブ」「アロマ」「ウッド」という4象限に分けてボタニカルのバランスを見て、選定していくといいます。今回は金木犀の華やかなフローラル感を主軸にするため、4象限のうち「アロマ」に着目しました。
使用したボタニカルは、金木犀を含めて9種類。金木犀の香りを主役に据えたうえで、コリアンダーシード、レモンバーベナ、オレンジピール、エチオピアカルダモン、クローブ、ジュニパーベリー、よもぎ、サンダルウッドという8種の天然由来ボタニカルを、必要最小限の手数で組み合わせています。
オレンジピールやレモンバーベナは金木犀の花の香りと相性がよく、香りに清涼感を添える存在として馴染んでいきました。よもぎやジュニパーベリーのような個性の強い素材も、単調さを防ぐアクセントとして加えます。扱いが難しかったのがクローブです。油分が多く主張の強い素材で、香りが花の繊細さと喧嘩してしまいやすいため、ボディ感を補う「ウッド」的な役割としてごく慎重に配合しています。
「単調すぎたり綺麗すぎると、ジュースのようになっていく。飲みごたえを残しながら、納得できる1本にしたかった」と前田さんは語ります。香料や砂糖を加えず、素材そのものの香りだけで奥行きをつくり上げました。
ボタニカルごとに
蒸留温度と浸漬時間を変えて
最後に全体のバランスを決めるのが製造工程です。SiCX蒸留所ではボタニカルごとの浸漬時間と蒸留温度を細かくデータ化。これまで蒸留所がつくってきたすべてのジンにおいて、蒸留を終えるたびに記録を重ね、素材ごとに最適な条件を数値として蓄積してきました。
「例えば、クローブはしっかり長く煮出しても雑味が出にくい一方、アンジェリカルートやよもぎのような素材は、煮出しすぎるとえぐみが出やすい性質を持ちます」(前田さん)。これまで培ってきた知見を元に素材ごとに異なるこの性質を見極め、最適な時間と量を探っていく地道な作業が、味わいの完成度を支えているのです。
幾度も試作を重ね、納得のいく香りにたどり着くまで検証を繰り返した末に、目指していた仕上がりを実現しました。
ソーダ割りにジントニックまで
さまざまなアレンジで楽しむ
「金木犀GIN -MATOU-」のおすすめの飲み方はさまざま。王道のソーダ割りからその飲み方も工夫次第でバラエティ豊かに広がります。
例えば、グラスに注いだ「金木犀GIN -MATOU-」に、ソーダとトニックを半々で割った「ソニック」。バランスよく飲みやすい仕上がりになるうえ、割ることでオレンジピール、ジュニパーベリー、コリアンダーの香りがぐっと開き、飲み物としての完成度が一段と上がります。
前田さんおすすめの飲み方は、1対1で作る濃いめのジントニックを、大きな氷でゆっくりと味わう飲み方。「通常のジントニックのようにグビグビと飲むのではなく、香りをじっくりと感じながら楽しむスタイルで、好みは分かれるものの、この商品の個性を存分に味わえる飲み方です」(前田さん)。
シーズン前からの花探し、手作業での収穫、そして幾度も重ねた蒸留の検証。ひとつひとつの積み重ねが、グラスに注いだ瞬間に立ち上る金木犀の香りへとつながっています。街を彩る金木犀の記憶を、この1杯とともに味わってみてください。



















